2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経芽腫における腫瘍自然退縮の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
22790309
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
井上 純 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (50568326)
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Keywords | 腫瘍退縮 / 神経芽腫 / 細胞死 |
Research Abstract |
癌には、無治療でも腫瘍が自然に消退するものがある。この「腫瘍の自然退縮現象」が高頻度に起こる癌として、神経芽腫(Neuroblastoma;NB)が知られているが、その分子メカニズムは全く不明である。これまで、申請者らは、LAPTM5遺伝子産物の蓄積により誘導される細胞死(LAPTM5誘導性細胞死)がNBの自然退縮に深く関与することを示した。本研究では、LAPTM5誘導性細胞死の生理的機序を明らかにし、NBの腫瘍自然退縮の分子メカニズムを解明することを目的とした。具体的には、LAPTM5の転写活性化メカニズムおよびその活性化因子の同定、LAPTM5陽性小胞の量的制御機構の解明に焦点を絞り、研究を行ってきた。 その結果、LAPTM5の転写は、癌抑制遺伝子であるp53により直接的に誘導されること、および癌遺伝子であるMYC(c-MycおよびN-Myc)により抑制されることを示唆する所見を得た。このことは、癌において、LAPTM5発現の制御異常が癌化に関与する可能性を示唆している。また、申請者は、LAPTM5はITCH(E3ユビキチンリガーゼ)との直接的な結合により、ユビキチン化によるタンパク質分解を受けること、およびITCH発現抑制により、NB細胞におけるLAPTM5誘導性細胞死が促進されることを明らかにした。このことは、ITCHの発現は、LAPTM5誘導性細胞死を抑制することで、NBの自然退縮癌を負に制御している可能性を示唆している。また、細胞内小胞輸送の制御因子およびオートファジー関連遺伝子であるMAP1LC3(LC3)遺伝子には、5つのファミリーが存在し(LC3A variant-1 and -2, LC3B, LC3B2, LC3C)、そのうちLC3A variant-1がNBを含むあらゆる癌種において高頻度に不活性化していることを明らかにした。このように、本研究において、LAPTM5遺伝子の発現制御機構を明らかにすることにより、NBの自然退縮の分子メカニズムの理解を深める事が出来た。
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