2010 Fiscal Year Annual Research Report
モデルマウスを用いたCGH解析による、神経芽腫の発生・自然退縮制御遺伝子の同定
Project/Area Number |
22790311
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岸田 聡 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (20402563)
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Keywords | 神経芽種 / モデルマウス / CGHアレイ |
Research Abstract |
末期腫瘍のCGHアレイ解析 神経芽腫モデルであるWCN Tgマウスに生じた末期腫瘍12サンプルを用いて行ったCGHアレイ解析の結果について、3つのパラメータに基づいたスコア計算を行い、そのランキングを作成した。更に、これらの変異がヒト神経芽腫においても起こっているかどうかを検討した。マウスとヒトでは染色体上における遺伝子の配置が異なっているため、ヒトで該当する染色体部分を逐一確認した上で、データベースで公開されているヒト神経芽腫の症例によるSNPアレイの結果を利用して照合を行った。 この末期腫瘍の解析から、一つの興味深い候補遺伝子を同定したため、本年度に予定していた「初期腫瘍のCGHアレイ解析」は、次年度へと繰り越した。Cited2というその遺伝子は、解析した全ての12個体において、欠失に相当するLog2 ratio値を示していた。また、Cited2のノックアウトマウスでは交感神経節が形成不全になることが報告されており、交感神経細胞への正常な分化に必須な遺伝子であることが示唆されている。そもそも神経芽腫とは、未分化な神経芽細胞が異常な増殖を示す腫瘍であり、そのがん細胞においてCited2が欠失しているという結果は、未分化な状態を保つという点で辻褄があっている。FISHにより、WCN Tgマウスの神経芽腫細胞においてCited2が実際にヘテロ欠失していることを再確認し、更に免疫染色により、前がん状態の神経芽細胞ではCited2の発現は低く、その周囲にある分化した神経節細胞では強いことを見出した。その後、がんの進行に伴ってCited2陽性の細胞が増えていくが、これらはがん細胞内のヒエラルキーにおいて、より分化傾向にある集団であろうと考えられる。言葉を変えると、より未分化な細胞、つまり神経芽腫幹細胞ではCited2の発現が抑制されている可能性が考えられる。
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