2011 Fiscal Year Annual Research Report
リソソーム病における造血系細胞の脳内浸潤機構の解明と治療への応用
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22790318
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
辻 大輔 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00423400)
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Keywords | リソソーム病 / ミクログリア / 細胞浸潤 / ケモカイン / GM2ガングリオシド / 活性化マクロファージ / Sandhoff病 / 神経変性疾患 |
Research Abstract |
GM2ガングリオシドーシスはリソソーム酵素であるβ-ヘキソサミニダーゼ(Hex)の欠損に基づき、糖脂質であるGM2ガングリオシド(GM2)が過剰に蓄積して発症する常染色体劣性遺伝病であり、中枢神経症状を伴う代表的なリソソーム病である。 本研究では、神経変性に伴った脳内への造血系細胞の浸潤に、ケモカインリガンド・レセプターシステムが深く関与していると仮説を立て、モデルマウス脳内ミクログリア及び骨髄・末梢血中の血液細胞におけるそれらの発現をin vivo及びin vitroで正常との比較解析を行うことで、リソソーム病における神経炎症の理解を深め、細胞移植治療への応用を目指すことを目的としている。 平成23年度は、SDマウス由来骨髄を利用して各種ケモカイン応答性を検討した。その結果、SDマウスの脳において発現上昇が起こっていることが知られているMIP-1αに対する応答性が野生型と比較して増大していることが明らかになった。次にSDマウスの脳において浸潤している血球系細胞を調べたところ、CD11b陽性の単球系細胞が顕著に浸潤していた。そこでSDマウスの骨髄からCD11b陽性の単球系細胞株を樹立し、MIP-1αに対する遊走能を野生型と比較した結果、顕著に増大しており、骨髄全体よりも明らかに強い遊走能を示した。さらに細胞の運動性をタイムラプスイメージングにより解析した結果、野生型と比較して顕著に細胞形態の変化及び移動が増大していることが明らかになった。そこで細胞形態に関与するアクチン関連分子の発現及びリン酸化の程度を調べたところ、リン酸化cofilinのみがSDマウス由来単球系細胞で低下しており、その他のタンパクに関しては顕著に増加していた。これらの結果から、アクチンの重合及び脱重合がSDでは顕著に増大しており、その結果としてMIP-1α対する遊走能を高めている可能性があることが明らかになった。 今後は、MIP-1αに対する遊走能を高めるシグナル伝達系を特定する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、神経変性に伴った脳内への造血系細胞の浸潤にケモカインリガンド・レセプターシステムが関与しているかを証明することを目的としている。平成23年度は、SDマウス由来骨髄を利用して各種ケモカイン応答性を検討した結果、MIP-1αに対する応答性が野生型と比較して増大していることが明らかになった。さらにリン酸化CofilinのみがSDマウス由来単球系細胞で低下しており、その他のタンパクに関しては顕著に増加していたことを明らかにした。これらの結果かち、本研究の目的に向かって順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度までの本研究により、リン酸化CofilinのみがSDマウス由来単球系細胞で低下しており、その他のタンパクに関しては顕著に増加していたことを明らかにし、リソソーム病における神経炎症の理解を深まった。今後は、さらなるデータを纏め、論文投稿を行う予定である。さらに細胞移植治療への応用を目指す。
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