2010 Fiscal Year Annual Research Report
肝ステム細胞に関連した肝線維化進展機序の分子病理学的研究
Project/Area Number |
22790341
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
池田 博子 金沢大学, 附属病院, 准教授 (10447675)
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Keywords | 肝線維化 / ステム細胞 / 病理 |
Research Abstract |
本年度は、ウイルス性慢性肝炎を中心とするヒト肝慢性肝疾患症例の収集と臨床病理学的データの解析を行った。ホルマリン固定外科的肝切除標本を用いで、マウスやラットなどの研究で肝ステム細胞マーカーとして注目されているDLK-1の発現を免疫染色やReal-time PCR法を用いて検討した。 その結果、ヒト肝組織におけるDLK-1 mRNA発現は正常肝と比較して、肝硬変で有意に高かった。免疫組織学的にDLK-1発現は正常肝ではほとんどみられないが、肝硬変では隔壁辺縁部の細胆管や孤在性小型細胞に腸性所見がみられ、これらの細胞では一部で肝細胞マーカーであるHepPar1や胆管細胞マーカーであるCytokeratin 19が陽性であった。また、肝線維化に関与していると考えられている肝星細胞のマーカーであるαSMAとDLK-1との二重陽性細胞が確認できた。 これらの結果から、DLK-1腸性細胞の一部は肝細胞や胆管細胞への分化傾向を示す細胞、すなわち、肝ステム細胞である可能性が示唆された。さちに、DLK-1陽性細胞が肝線維化の進行に伴って増加すること、一部は線維化に重要な肝星細胞の表現形を示していることが明らかとなり、DLK-1陽性肝ステム細胞が肝線維化に関与している可能性が示唆された。肝線維化進展の機序は解明されておらず、現在の医療では線維化を抑える治療はない。本研究は肝線維化機序の解明や抑制治療への寄与につながりうる検討であり、意義のある研究であると思われる。 来年度は培養細胞を用いた実験を施行し、DLK-1陽性細胞の特徴、線維化関連サイトカイン、ケモカインに対する反応性、線維化関連分子の産生などについて、検討する予定である。
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