2011 Fiscal Year Annual Research Report
新たな甲状腺癌特異的バイオマーカーの生物学的意義とその臨床応用
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22790350
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
菊地 智樹 東海大学, 医学部, 助教 (50404588)
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Keywords | 甲状腺乳頭癌 / SNX5 |
Research Abstract |
甲状腺乳頭癌は甲状腺癌の90%を占める悪性腫瘍であり、早期にリンパ節転移を来し予後不良群も存在するため、腫瘍形成の予防や転移制御の解明が急務である。ただしその背景となる分子生物学的メカニズムの詳細は明らかにされていない。本研究では近年細胞増殖や細胞運動に関連するという報告のあるSNX5蛋白に対するモノクローナル抗体を樹立し、パラフィンブロックによる免疫組織学的解析を行ったところ、SNX5蛋白が甲状腺乳頭癌120例中113例(94%)と高率に発現し、その他の臓器の悪性腫瘍では173例中乳癌1例(0.5%)にしか発現がみられなかったことを見いだした。さらにmRNAレベルでも甲状腺乳頭癌細胞は正常濾胞上皮細胞よりもSNX5の高い発現が確認された。 さらにN-bis-nitrosamineとsulfadimethoxine(SDM)を使用した甲状腺癌発癌モデルマウスを使用して、マウスのSNX5の発現を検討したが、マウス甲状腺癌組織においてもマウス正常甲状腺組織よりSNX5のmRNAレベルの高発現がみられた。こうした研究結果からSNX5の高発現が甲状腺濾胞上皮を由来とする癌、特に乳頭癌のcarcinogenesisに関与する可能性があると考えられた。現在SNX5の発癌における分子メカニズムについて、細胞周期調節蛋白や、アポトーシス関連タンパク、さらにはDNA修復関係蛋白などの発現についてSNX5蛋白の強制発現細胞株を用いて検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト癌組織パラフィンブロックでの検討から開始し、mRNAレベルの解析、さらにマウス発ガンモデルでの検討でもヒトと同様の結果が得られているため、現在のところおおむね順調に進展していると考えます。
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Strategy for Future Research Activity |
甲状腺癌(ヒトでは特に乳頭癌)について、ヒトおよびマウスレベルでのSNX5蛋白の高発現の確証は得られたので、最終年度はSNX5がcarcinogenesisにどのようなメカニズムで関与しているかを検討するのが中心となる。現在、SNX5と細胞増殖の分子メカニズムについて、細胞周期を調節する蛋白や、アポトーシス関連タンパク、DNA修復関係蛋白などの発現をSNX5蛋白の強制発現細胞株を用いて検討しているところであるが、さらに現在までに知られる甲状腺乳頭癌の遺伝子異常であるBRAFやRASのpoint mutation、RET/PTCやTRK rearrangementとSNX5の関連を検討したいと考えている。
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Research Products
(3 results)