2010 Fiscal Year Annual Research Report
抗癌免疫応答を惹起するアジュバントによる免疫抑制性ミエロイド細胞の機能転換
Project/Area Number |
22790371
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
志馬 寛明 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (70372133)
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Keywords | 腫瘍免疫 / 免疫抑制 / アジュバント / マクロファージ / MDSC / poly I:C / 二本鎖RNA / TLR3 |
Research Abstract |
微生物由来アジュバントの投与による自然免疫系の活性化は癌の増殖を抑制するが、その作用機構には不明な点が多い。本研究では、癌によって誘導され、腫瘍内に集積する免疫抑制性能をもったmyeloid-derived suppressor cells(MDSCs)および腫瘍随伴マクロファージ(tumor-associated macrophages, TAMs)のアジュバントに対する応答を解析した。3LL肺癌細胞株を移植したマウスに、アジュバントの一つで二本鎖RNAの合成アナログであるpoly I:Cを投与し、腫瘍からMDSCsおよびTAMsを単離して遺伝子発現やサイトカイン産生を調べた。その結果、いずれの細胞でもIFN-β等の抗癌免疫応答に関連する遺伝子の発現がみられ、poly I:Cの投与によって腫瘍内でこれらの細胞が抗癌活性を獲得していることが示唆された。さらに、活性化したTAMsは癌細胞に対して傷害活性を有していたことから、poly I:Cの作用によってTAMsが新たに抗癌エフェクター細胞としての機能を獲得し、癌の増殖に抑制的に働くと考えられた。Poly I:Cは、細胞内に取り込まれた後、Toll-like receptor 3(TLR3)およびMDA5によって認識され、それぞれアダプター分子であるTICAM-1(TRIF)およびIPS-1(MAVS)を介して標的細胞を活性化する。各アダプター分子のノックアウトマウスを用いてpoly I:Cの治療効果を検討したところ、wild-typeマウスでみられた治療効果はIPS-1-/-マウスでは消失しなかったが、TICAM-1-/-マウスで消失した。さらに、poly I:C投与後のTICAM-1-/-マウスからTAMsを単離し、癌細胞に対する傷害活性を調べたところ、活性が低下していたことから、TICAM-1経路はpoly I:CによるTAMsの抗癌エフェクター細胞としての機能獲得に必須であると考えられた。今後は、TLR3-TICAM1経路の活性化によるTAMsの機能変化を詳細に調べるとともに癌細胞の傷害を担うエフェクター分子を同定し、アジュバント投与によるTAMsの機能転換メカニズムの詳細と抗癌免疫応答の作用機構を明らかにしていく予定である。
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