2011 Fiscal Year Annual Research Report
抗癌免疫応答を惹起するアジュバントによる免疫抑制性ミエロイド細胞の機能転換
Project/Area Number |
22790371
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
志馬 寛明 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (70372133)
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Keywords | 癌 / アジュバント / マクロファージ / 抗腫瘍免疫 / 自然免疫 / TLR |
Research Abstract |
本年度は、polyI:Cの投与によって活性化された腫瘍随伴マクロファージ(tumor-associated macIophages,TAM)の癌細胞傷害活性に関わるエフェクター分子の同定と機能変化の解析を行った。3LL癌細胞株の移植マウスにpolyI:Cを腹腔内投与したのち腫瘍を観察すると、早期に出血性壊死を起こしていた。PolyI:C投与による壊死や腫瘍増殖の抑制は、TNF-αのノックアウトマウスでは全く観察されなかった。腫瘍内のTNF-αを調べると、polyI:C投与後すぐに発現がみられ、その主な産生細胞はTAMであった。PolyI:Cは、TLR3-TICAM-1経路とMDA5-IPS-1経路を活性化する。TICAM-1ノックアウトマウスでは、腫瘍内でのTNF-α産生はほぼ完全にキャンセルされ、IPS-1ノックアウトマウスではキャンセルされなかった。PolyI:Cで活性化したTAMによる細胞傷害活性は、TNF-αの産生量に相関し、その中和抗体で阻害された。マクロファージの形質は、遺伝子の発現パターンからM1およびM2に分類される。M1形質は抗腫瘍活性と関連する一方、M2形質は腫瘍増殖の促進と関連する。多くの場合、TAMはM2形質を示し、腫瘍の成長を補助している。PolyI:Cの刺激により、TAMではTNF-αを含むM1関連遺伝子群の発現が誘導され、M2関連遺伝子群の発現はほとんど変化しなかった。さらに、M1関連遺伝子群の発現は、TICAM-1のノックアウトマウス由来のTAMでほぼキャンセルされ、IPS-1ノックアウトマウス由来のTAMではほとんど変化しなかった。よって、polyI:CはTAMのTLR3-TICAM-1経路を選択的に活性化し、M1形質を付与すること、それにより発現誘導されたTNF-αによって3LL腫瘍の増殖抑制が起こることが明らかになった。
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Research Products
(10 results)