2010 Fiscal Year Annual Research Report
重層扁平上皮の増殖、分化、がん化におけるTHGー1の役割
Project/Area Number |
22790374
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 裕之 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 助教 (70375509)
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Keywords | 重層扁平上皮 / THG-1 / がん / EGF / Ras / MAPK |
Research Abstract |
皮膚や食道は重層化した上皮細胞によって微生物感染、物理的刺激や水分の喪失から組織を防御する重要な役割を果たしている。そしてその構成細胞は常に更新され、絶妙なバランスで一定の細胞数を維持することで組織の恒常性が保たれている。構成細胞は基底部に存在する幹細胞が非対称分裂を行うことで供給され、それらが有棘層、顆粒層に移動するに伴い増殖を止めて分化する。しかしながらこのような重層扁平上皮の構築が、どのような機構で行われているのかは不明な点が多い。また重層扁平上皮を主な起源とする扁平上皮がんは、食道、皮膚、肺、頭頸部などに認められ、腺がんに次いで多いがんである。近年がんの発生には、その組織幹細胞に変異が蓄積することで、がん幹細胞が発生することが重要であると考えられており、組織構築機構の解明とともに注目されている。我々はTsc-22ファミリータンパク質の一つであるTHG-1(Tsc22D4)の機能を解析する過程で、THG-1が皮膚、食道などの重層扁平上皮の基底細胞に特異的に発現することを見出した。基底細胞には幹細胞が存在しがん化と密接に関わっていることから、食道、肺がんの組織アレイを用いて、THG-1の発現について検討したところ、食道、肺の扁平上皮がんにTHG-1が高発現することを見出した。そこで皮膚角化細胞株にTHG-1を発現させたところ、EGFによる細胞形態の変化、及び増殖、運動性が亢進することが認められた。さらにコラーゲンゲル上で表皮構造を構築させたところ、THG-1発現細胞では有棘層や顆粒層への分化が抑制されることを見出した。以上よりTHG-1は、扁平上皮がんの新規がん遺伝子として機能することが示唆された。今後THG-1の重層扁平上皮の増殖、分化、がん化における役割を明らかにし、新規がんの診断法の開発、及びTHG-1が制御する経路を標的にした新規治療法の開発に結びつけていきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)