Research Abstract |
肝幹・前駆細胞にはオーバル細胞と小型肝細胞が知られているが,その由来と分化機構についてよくわかっていない。特異マーカーとしてオーバル細胞はThy1,小型肝細胞はCD44が同定され,多くの小型肝細胞が成熟肝細胞に由来すること,オーバル細胞の一部も小型肝細胞に分化することを明らかにしてきた。本研究の目的は,オーバル細胞の由来と活性化・分化誘導機序について解析することであり,本年度は肝幹細胞の分化機構の解析を中心に行った。(1)肝幹細胞の分化方向に影響を与える増殖因子の候補をマイクロアレイの結果から,EGF, bFGF, HGF, LIF, TNFα, IFNγ, Oncostatin M, PDGF-BB, SCF, IL-6, TGF-β1及び2,以上12種類を抽出した。これらの因子を1種類ずつ培地に加え,未分化Thy1陽性オーバル細胞を培養したところ,EGF, bFGF, HGFを加えた場合のみ小型肝細胞コロニーを形成した。次にこれらの3種類の組み合わせを検討したところ,より大きい小型肝細胞コロニーを形成したことから,オーバル細胞が小型肝細胞に分化するための因子として,EGF, bFGF, HGFが重要であることが示唆された。現在,成熟化誘導の解析を進めている。(2)in vivoにおける肝幹細胞分化機構の解析を行うため,肝障害モデルラット肝臓から単離したThy1陽性とCD44陽性細胞,そして正常肝から単離した成熟肝細胞をRetrorsine/部分肝切除モデルに移植し,移植細胞巣(foci)を解析した。結果,CD44陽性細胞由来のfociは移植30日までは急速に増殖するが,全fociの約33%が細胞老化に陥り,60日以降減少した。一方,成熟肝細胞は徐々に増殖し,60日以降で最も移植効率が高く,細胞老化に陥ったfociは13%のみであった。現在,更なる解析を進めている。
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