Research Abstract |
肝幹・前駆細胞にはオーバル細胞と小型肝細胞が知られているが,その由来と分化機構についてよくわかっていない。特異マーカーとしてオーバル細胞はThy1,小型肝細胞はCD44が同定され,多くの小型肝細胞が成熟肝細胞に由来すること,オーバル細胞の一部も小型肝細胞に分化することを明らかにしてきた。本研究の目的は,肝幹・前駆細胞の活性化・分化誘導機序について解析することであり,本年度は肝幹細胞の分化機構の解析を中心に行った。(1)昨年度では,肝幹細胞の分化方向に影響を与える増殖因子の検討を行ったところ,オーバル細胞が小型肝細胞に分化するための因子として,EGF, bFGF, HGFが重要であることがわかった。そこで本年度は,肝幹・前駆細胞の成熟化能を解析するため,障害肝由来のThy1陽性細胞及びCD44陽性細胞,及び正常肝由来の小型肝細胞コロニーを高密度で培養し,成熟化度を毛細胆管形成能とC/EBPαの発現率で評価した。結果,1コロニー当たりの毛細胆管長はThy1陽性細胞;1214.3±1175.6μm,CD44陽性細胞;987.0±747.7μm,小型肝細胞;3619.2±2367.7μm,C/EBPα陽性率はThy1陽性細胞;21.2±1.5%,CD44陽性細胞;18.9±1.5%,小型肝細胞;32.6±1.4%であった。小型肝細胞の方で有意に成熟化度が高く,障害肝由来の肝幹・前駆細胞では分化能が制限されている可能性が示唆された。(2)in vivo移植実験において,多くのThy1陽性細胞はfociを形成せず,肝細胞置換率が低かったが、Thy1陽性細胞を移植したレシピエント肝において肝前駆細胞(Small hepatocites-like progenitor cells ; SHPCs)の出現率と増殖率が高まる,という新しい知見が得られ、現在解析を行っている
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