2010 Fiscal Year Annual Research Report
宿主共生におけるヒト腸管常在菌バクテロイデスの莢膜相変異の役割
Project/Area Number |
22790409
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
中山 治之 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (80294669)
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Keywords | Bacteroides fragilis / 莢膜 / 相変異 / 共生 / DNA逆位 |
Research Abstract |
1.mpi欠失変異株ライブラリーの作製 現存するBacteroides fragilis Δmpi株(PS3およびPS6のプロモーターON向き)に完全長のmpi遺伝子をクローニングしたpVALmpiを導入することでmpi遺伝子をtransに相補した。得られたΔmpi(pVALmpi)株を非選択培地で経代培養することによってプラスミドの除去を行った。その結果、薬剤感受性クローンが1111株得られた。全てのΔmpi株についてMultiplex PCR法を用いてPS1、PS3、PS4、PS5、PS6.PS8およびPS9のプロモーターの向きを確認したところ、理論的には2^7=128通りの組み合わせパターンが考えられるにもかかわらず、ある一定の発現パターンへの偏りが認められた。特に、PS3領域のプロモーターのみがONになるクローンが全体の12%も占めた。また、PS3領域がOFFの場合は必ずPS8領域はONになった。一方、PS8領域がOFFの場合は必ずPS3領域はONであった。 2.mpi欠失変異株のmRNA発現パターン 得られたΔmpi株をGAM培地にて対数増殖期中期まで培養しtotal RNAを抽出した後、莢膜生合成遺伝子の転写発現パターンを定量的PCR法によって検討した。その結果、Δmpi No.820株(PS8のみプロモーターON向き)およびΔmpi No.805株(PS3のみプロモーターON向き)においては野生株と比較してプロモーターの向き通りの発現パターンを示した。ところが、Δmpi No.644株(PS8のみプロモーターOFF向き)ではPS8領域以外のPS1、PS3、PS4、PS5、PS6、およびPS9領域のプロモーターの向きはONで固定されているにも関わらずPS3,PS5,PS6領域の転写レベルは野生株と同等かそれ以下であった。また、Δmpi No.638株(PS3のみプロモーターOFF向き)でも、PS3領域以外のpS領域のプロモーターの向きはONで固定されているにも関わらず、野生株よりも転写レベルの上昇が認められたのはPS4とPS8領域だけであった。 以上の結果より、莢膜の発現はMpiによるプロモーター領域のDNA逆位だけで制御されているのではなく、より複雑な制御メカニズムが存在することが示唆された。
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