2011 Fiscal Year Annual Research Report
肺炎クラミジアエフェクター分子の同定と宿主細胞における機能解析
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22790419
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
簗取 いずみ 川崎医科大学, 医学部, 助教 (40454847)
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Keywords | 肺炎クラミジア / エフェクター / III型分泌装置 / 感染制御 |
Research Abstract |
本研究は偏性細胞内寄生性細菌である肺炎クラミジアの感染戦略の解明および、新規診断法・治療法の開発を目的に研究を行っている。肺炎クラミジアはIII型分泌装置を用いて、エフェクターを宿主細胞に注入し、宿主細胞内に感染することを可能にしている。本研究では、肺炎クラミジア機能未知遺伝子の網羅的スクリーニングにより、63個のエフェクター候補分子を見出してきた。本年度は、候補分子の一部に対する抗体を作製し、2個の分子について、肺炎クラミジアから宿主細胞へ候補分子が移行していることを確認し、これらをエフェクター分子であると同定した。そのうちの1つFke063について、GFP融合組換え体蛋白質を発現させたヒト上皮細胞、または、肺炎クラミジアの感染細胞に対して、Fke063特異抗体を用いて免疫染色を行ったところ、Fke063が宿主細胞の核に局在し、特にカハール体と共局在することを明らかにした。カハール体は核内低分子RNAなど特定の遺伝子発現調節を行っていることが近年明らかにされ、さらに転写活性が高い細胞に多くみられる。カハール体にFke063が局在するということは、肺炎クラミジアの感染維持のために宿主の遺伝子発現を調節していることが予測される。また、Fke063特異抗体によって、ヒト上皮細胞への肺炎クラミジアの感染率が有意に減少することも明らかにした。すなわち、Fke063特異抗体は、肺炎クラミジアの中和抗体になりうることが示唆された。本年度までに明らかにしたことは、肺炎クラミジアの感染経路の1つを明らかにする起点になるとともに、いまだ開発できていない中和抗体の候補を見出したものであり、基礎的研究だけでなく臨床的にも重要な意味を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、約60個のエフェクター候補分子を見出すことに成功した。それらはいずれも宿主細胞内で機能する際にその発現パターンは時間的空間的に異なっており、個々に解析が必要である。そのため当初の計画以上に時間を要している部分もある。 当初、GFP融合蛋白質として肺炎クラミジア機能未知分子を酵母内で発現させる系を作製していたが、これらの分子の中には、GFPを融合させることにより、本来の機能に変更が加わっている可能性もある。各分子については、個々の抗体を作製する必要がある。さらに、これらの蛋白質を大腸菌内で発現させると、毒性が強く大腸菌の増殖抑制を引き起こしたり、合成した蛋白質が封入体に存在し、可溶化することが困難である場合を経験している。これらの理由により、当初の計画より若干進行が遅れた部分もあるが、研究全体としては、概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は以下の2点について主に研究を進めていく。 1)肺炎クラミジアに対する抗体作製 当初の計画では、肺炎クラミジアにGFPを融合させた蛋白質として発現させたものを種々の解析で使用する予定であった。しかし、肺炎クラミジア蛋白質の中には、GFPで標識することにより、本来もつ機能を阻害している蛋白質があることがわかり、tagで標識しない肺炎クラミジア蛋白質の発現を試みるよう計画を変更した。その結果、それらの分子を認識するために特異的抗体の作製が必須となる。 2)Fke063結合分子の同定 昨年度までに、肺炎クラミジアのエフェクター分子として同定したFke063が核内のカハール体に局在することを明らかにした。そこで、このFke063が宿主細胞のどの分子と相互作用しているのかについての解析を行う。そのために、GSTもしくは6xHis融合蛋白質を用いpulldownアッセイを行う。また、宿主細胞内で肺炎クラミジアを蛋白質を誘導発現する系を作製し、肺炎クラミジア蛋白質がどのような挙動をとるのかを解析する。
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