2010 Fiscal Year Annual Research Report
TLRシグナル抑制分子群の機能解析および敗血症治療薬への応用に関する研究
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22790421
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
杉山 圭一 国立医薬品食品衛生研究所, 衛生微生物部, 主任研究官 (80356237)
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Keywords | TLR / ペプチド / マイコトキシン / 敗血症 |
Research Abstract |
TLRシグナルの無秩序な亢進が原因となる敗血症は、米国一国においてさえ年間20万名もの死亡者数に達する疾病でありながら、有効な治療薬は上市されていない。本研究は、敗血症治療薬候補分子として特許化したToll-like receptor 4(TLR4)結合性ペプチドSTM28とその変異体、並びに発がん性が認められていないマイコトキシンのDeoxynivalenol(DON)のTLRシグナルへの抑制効果を知的アドバンテージとして、これらTLRシグナル抑制分子群の機能解析を実施すると同時に、同分子群の敗血症の治療薬のリードコンパウンドとしてのブラッシュアップを進め、臨床試験への供試を目指す。本年度は、STM28とDONのTLRシグナル抑制機序について解析を進めた。 ヒト胚性腎細胞HEK 293にNF-κBのレポーター遺伝子をトランスフェクションし、同時に強制的にTLR4細胞内ドメインを会合させシグナルを惹起するキメラ分子、もしくはMyD88、TRIF等のTLRのシグナル伝達を担う分子群を過剰発現させることにより惹起されるNF-κBレポーター活性の上昇に及ぼすSTM28の影響を検討した。その結果、これら分子の過剰発現により誘導されるNF-κBレポーター活性に対してSTM28は抑制作用を示さなかった。従って、STM28の作用点は少なくとも細胞内には存在しないことが強く示唆された。本結果と、STM28がTLR4の細胞外ドメインとの相互作用を指標に単離されたことに矛盾はない。一方、DONのTLRシグナル抑制作用についても、HEK293細胞においてMyD88過剰発現により誘導されるNF-κB依存性レポーター活性に対する影響を指標に検討した。その結果、MyD88過剰発現により誘導されるNF-κB依存性レポーター活性の上昇をDONは抑制しうることが明らかとなった。これより、DONはアダプター分子MyD88以降のTLRシグナル伝達系路に対して阻害的作用を呈すことが示唆された。
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