2010 Fiscal Year Annual Research Report
高病原性鳥インフルエンザウイルスがヒト間で伝播するための重要な変異と病原性の解析
Project/Area Number |
22790426
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 晋弥 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (90466839)
|
Keywords | インフルエンザ / 伝播 / 変異 |
Research Abstract |
近年、ヒトから分離される高病原性H5N1鳥インフルエンザウイルスには、鳥分離株にはみられない変異を有するものが多数見つかっており、ヒトへの適応がおきていると推測される。しかしながら、ヒト間では効率よく伝播しておらず、ヒト間で効率よく伝播するには更なる適応が必要と考えられる。本研究は、ヒト間での伝播に関与しうる変異の同定が目的であり、その目的達成のために、ヒト分離H5N1ウイルスを正常ヒト気管支細胞で継代し、更に適応させ、よく増えるようになったウイルスで生じた変異とヒトの呼吸器細胞での増殖性や動物モデルにおける伝播性との関係の解析を行った。また、H5N1ウイルスはヒト間で伝播しないのに対し、新型H1N1ウイルスは、効率よく伝播する。その違いは何によるのか比較解析し、インフルエンザウイルスがヒトからヒトに効率よく伝播するための重要な因子を同定する試みも実施している。 解析の結果、ウイルスのPB2タンパク質の591番目のアミノ酸変異が、新型H1N1ウイルスの哺乳動物における効率のよい増殖に関与することを明らかになり、更に、H5N1ウイルスでも591番目での変異が起きるとヒト気管支上皮細胞でよく増えるようになり、マウスにおいてより高い病原性を示すようになることが明らかになった。本研究で同定したアミノ酸変異(PB2の591番目)は、今後、分離されるH5N1ウイルスなどのリスク評価をする際の重要なマーカーとなりうると考えられる。この成績は、2010年に論文発表している。
|