2011 Fiscal Year Annual Research Report
高病原性鳥インフルエンザウイルスがヒト間で伝播するための重要な変異と病原性の解析
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22790426
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 晋弥 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (90466839)
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Keywords | インフルエンザ / 伝播 / 変異 |
Research Abstract |
近年、ヒトから分離される高病原性H5N1鳥インフルエンザウイルスには、鳥分離株にはみられない変異を有するものが多数見つかっており、ヒトへの適応がおきていると推測される。しかしながら、ヒト間では効率よく伝播しておらず、そのためには更なる適応が必要と考えられる。本研究は、ヒト間での伝播に関与しうる変異の同定が目的であり、その目的達成のために、ヒト分離H5N1ウイルスを正常ヒト気管支細胞で継代し、更にヒトの細胞に適応させ、よく増えるようになったウイルスで生じた変異について、ヒト呼吸器細胞での増殖性および動物モデルでの伝播性への影響を調べた。また、H5N1ウイルスはヒト間で伝播しないのに対し、新型HIN1ウイルスは、効率よく伝播する。その違いは何によるのか比較解析し、インフルエンザウイルスがヒトからヒトに効率よく伝播するための重要な因子を同定する試みも実施している。 解析の結果、ウイルスのPB2タンパク質の591番目のアミノ酸変異が、新型H1N1ウイルスの哺乳動物における効率のよい増殖に関与することを明らかになり、更に、H5N1ウイルスでも591番目での変異が起きるとヒト気管支上皮細胞でよく増えるようになり、マウスにおいて顕著に高い病原性を示すようになることが明らかになった。 伝播性を調べたところ、この変異を有するH5N1ウイルスは、哺乳動物での飛沫感染は行わなかったが、今後、分離されるH5N1ウイルスなどのリスク評価をする際の重要なマーカーの1つとなりうる。 一方、正常ヒト気管支細胞での継代過程で起きたHA遺伝子での変異について解析を行ったが、レセプター特異性において顕著な変化は検出されず、HA変異ウイルスは哺乳動物における飛沫感染は行わなかった。 以上、成績をまとめると、H5N1ウイルスの哺乳動物間で伝播するのに十分な変異は未だ不明であるが、PB2の591番目のアミノ酸が哺乳動物での効率のよい増殖・伝播に重要であることを新規に見出し、情報提供を行った。
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