2010 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティック制御によるHIV潜伏感染維持と破綻機構の解明
Project/Area Number |
22790437
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
今井 健一 日本大学, 歯学部, 講師 (60381810)
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Keywords | HIV / 潜伏感染 / 転写 / G9a / エピジェネティック / メチル化 |
Research Abstract |
HIVの潜伏感染はAIDS克服のためには解決しなければならない難題であるが、その成立と破綻機構は不明な点が多い。これまで申請者はHIVの転写制御研究を行い、抑制因子とHDACによる潜伏感染維持と酪酸産生菌によるその破綻機構を分子レベルで明らかにしてきた。しかしながら、長期間にわたる安定な遺伝子発現の抑制にはhistone H3 Lysine 9 (H3K9)のメチル化が重要であることが知られているもののHIVの潜伏感染におけるヒストンのメチル化の実態はよくわかっていない。従ってHIV潜伏感染におけるH3K9のメチル化、特にその責任酵素であるH3K9ジメチル化酵素G9aの役割を解析した結果、G9aがHIVの潜伏感染維持に深く関与していることが明らかとなった(Imai et al.,J Biol.Chem.2010)。 T細胞にG9aを強発現させると、HIV LTRからの基礎転写およびTNF-αやTatによる転写誘導が著しく抑制された。G9aの欠失変異体を用いた実験より、G9aによる抑制にはH3のメチル化を担うSETドメインが必須であることがわかった。また、G9a siRNAの導入によってHIV転写とウイルスの産生が誘導された。従って、G9aはH3のメチル化を介してHIVの発現を負に制御していることが示唆された。また、G9aの特異的阻害剤であるBIX01294は、HIV潜伏感染細胞のH3K9ジメチル化を特異的に抑制することにより潜伏HIVの複製を促進した。BIX01294の潜伏HIV活性化に対する作用とHDAC阻害剤であるSAHAやDNAメチル化酵素阻害剤である5-aza-dCとの作用は相乗的に認められた。以上の結果から、HIVの潜伏感染維持にはヒストンの脱アセチル化のみならず、G9aによるH3K9のメチル化も重要であり、両者は相乗的に作用していることが示唆された。
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Research Products
(12 results)