2011 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティック制御によるHIV潜伏感染維持と破綻機構の解明
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22790437
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
今井 健一 日本大学, 歯学部, 講師 (60381810)
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Keywords | ヒストン / HIV / 潜伏感染 / 酪酸 / HDA |
Research Abstract |
HIV感染者数は世界で3000万人をこえ、毎年200万人余りがエイズで亡くなっている。わが国は先進国の中で、HIV感染者、エイズ患者ともに増え続けている数少ない国の1つである。HIVの潜伏感染はAIDS克服のためには解決しなければならない難題であるが、その成立と破綻機構は不明な点が多い。現行の抗HIV化学療法は潜伏感染HIVには無効であるため、潜伏HIVの複製をコントロールできるか否かが感染者の予後を左右する。近年、抑制因子によってLTRに呼び込まれたHDACが近傍のヒストンを脱アセチル化し、HIVの転写を積極的に抑制することで潜伏感染を維持することが示された。他方、感染者体内においてこの潜伏感染がどのような状況で破綻するのかは不明であった。我々は、歯周病の原因菌の代謝産物・酪酸がHDACを阻害することでHIV再活性化を引き起こすことを報告した。酪酸は腸内細菌の主な代謝産物の一つであることから、本研究では再活性化における腸内細菌の影響、併せて膣内細菌について検討した。その結果、腸内細菌ではClostridium属やEubacterium属などにおいて顕著なHIV複製と転写活性化が認められた。膣内細菌のA.tetradiusやA.vaginalisなども再活性化を誘導した。活性化の認められた細菌の培養上清からは高濃度の酪酸が検出され、酪酸がヒストンのアセチル化を促進しLTRのクロマチン構造を活性化型に変換することで転写を誘導した。細菌感染症が日和見感染の病原体であると同時にエイズ進展にも深く関わっていることが推察され、エイズの進展阻止に細菌感染症の予防と治療が重要であることが示唆された。
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Research Products
(12 results)