2010 Fiscal Year Annual Research Report
パイエル板の分化発生過程における高次構造構築メカニズムの解析
Project/Area Number |
22790483
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中川 れい子 独立行政法人理化学研究所, 幹細胞研究グループ, 専門職研究員 (40469911)
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Keywords | CXCR4 / Lymphoid tissue inducer cell / リンホトキシン / パイエル板 |
Research Abstract |
外来抗原に対する免疫応答を担う場である二次リンパ器官のパイエル板は、胎児期に原基が形成された後、出生直後の新生児期に組織内部の高次構造が構築される。本研究はそのメカニズムを解明することを目的としている。 免疫染色による解析から、胎児期には原基全体に均一に分布していたLymphoid tissue inducer(LTi)細胞は生後B細胞予定域に斑状に集結した後、B細胞領域の外側に移動しT細胞領域との境界部に分布していた。これに伴いB細胞およびT細胞の各細胞領域への集積が始まることから、LTi細胞の再分布は細胞領域形成過程に重要な役割を果たすことが予想された。さらにリンホトキシン阻害剤を用いたFACSおよび免疫染色の解析の結果、この特徴的なLTi細胞の分布変化は、LTi細胞表面に発現するリンホトキシン依存的にケモカインレセプターがCXCR5からCXCR4にスイッチすることで、CXCL13陽性のB細胞領域からCXCL12陽性のT細胞領域へ細胞が移動するというメカニズムによるものである可能性が示唆された。そこで、LTi細胞特異的ケモカインレセプター発現を欠損させたマウスを解析したところ、LTi細胞のB細胞領域からT細胞領域への移動が阻害され、T細胞領域形成不全が認められた。この結果より、新生児LTi細胞でのCXCR4の発現はLTi細胞のT細胞領域境界部へ分布制御に必須であり、さらにこの分布変化はT細胞領域形成に重要な役割を果たすことが明らかとなった。 これまでLTi細胞の研究は主としてリンパ器官の原基形成の機能解析の報告が中心であったが、本研究は器官内部の高次構造の構築にもLTi細胞が関与することを示す初めての報告である。生体内で複雑に制御されている免疫応答反応は、各リンパ器官の高次構造に依存したリンパ球の分布および動態の上に成立するものであることから、本研究による高次構造構築メカニズムの解明はリンパ器官の秩序形成を理解する上で重要な位置をしめるものと考えられる。
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Research Products
(1 results)