2011 Fiscal Year Annual Research Report
パイエル板の分化発生過程における高次構造構築メカニズムの解析
Project/Area Number |
22790483
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中川 れい子 独立行政法人理化学研究所, 幹細胞研究グループ, 専門職研究員 (40469911)
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Keywords | CXCR4 / Lymphoid tissue inducer cell / リンホトキシン / Peyer's Patch |
Research Abstract |
小腸の腸管壁に点在する二次リンパ器官であるパイエル板は、胎児発生後期に原基が出現し、出生後一週間で細胞領域決定など組織内部の高次構造が構築される。本研究はこの高次構造構築メカニズムの解明を目的としている。 昨年度までに、原基形成に働くLymphoid tissue inducer(LTi)が出生直後はB細胞予定域に集積した後、数日後にはB/T細胞領域境界部に移動することを明らかにした。さらにこの現象は、LTi表面のケモカインレセプターが、リンホトキシン依存的にCXCR5からCXCR4陽性にスイッチすることで制御されていることを示した。しかし、リンホトキシンレセプターLTβRはLTiにはなくストローマ細胞Lymphoid tissue organizer(LTo)側に発現し、スイッチを直接制御するメカニズムが不明であった。そこで、我々はLTo細胞からLTβRシグナル依存的に分泌される液性因子がケモカインレセプタースイッチを誘発すると仮定し、胎児LTiをセルソーターで分取し、in vitro培養系でこれまでにCXCR4発現誘導作用が報告されている種々のサイトカイン類の効果を検証したところ、TGFβ1にその効果が認められた。TGFβは様々な発生過程に重要な役割を果たすだけでなく、腸管免疫系細胞の分化や活性に作用することが多数報告されており、パイエル板分化に何らかの役割を果たしても不思議ではないと考えられる。現在in vivoにおいて、本当にTGFβ1がパイエル板発生過程に関与しているのかどうか、中和抗体や阻害剤を用いた系で検討を行っている。 LTiはリンパ器官形成だけでなく、NK様細胞への分化など免疫機能をもつ細胞として近年大きく注目されている。本研究は、そのLTiの新たな役割を示すものであり、多様なLTiの機能を理解する上で重要な位置を占めるものである。
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