2011 Fiscal Year Annual Research Report
災害時の保健医療サービスのレジリエンス向上に関する研究
Project/Area Number |
22790504
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
冨尾 淳 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (10569510)
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Keywords | 大規模災害 / レジリエンス / 保健医療サービス / 防災行動 / 医療情報 |
Research Abstract |
本研究は、被災後の適応力を表す「レジリエンス」という概念に着目し、保健医療サービスの提供者(医療機関等)および利用者(患者等)の各々の立場におけるレジリエンスの現状を把握し、レジリエンス向上のための要因を分析することで、災害時における保健医療サービスの継続・質の確保を可能にする災害対策のあり方を示すことを目的とする。23年度の実績は以下の通り。 1.文献レビュー:地域やシステムのレジリエンスの概念的構成要素として、迅速性、頑健性、冗長性、処理能力などが挙げられており、保健医療サービスについて、以上の要素をもとにレジリエンスの規定要因を整理した。 2.地域レベルの医療ニーズの推計:国民生活基礎調査の結果をもとに東日本大震災の被災地の避難所等における慢性疾患等の患者数の推計を行った。潜在的な医療ニーズの推計は地域の保健医療サービスの迅速性、処理能力の向上につながるものと考えられた。 3.被災自治体における医療情報の利用状況に関する調査:東日本大震災の被災地では医療機関や患者本人の被災により過去の医療情報が入手困難となったが、その一助としてレセプト情報の医療機関への提供が行われた。被災3県の国民健康保険連合会での聞き取り調査により、レセプト情報が慢性疾患患者等の医療情報の入手手段として、また被災医療機関の再建などに活用されていた実態が明らかとなった。同時に利便性の改善や情報安全性の問題等、今後の利用における課題も明らかとなった。 4.地域住民の自助・共助の分析:長野県小諸市の市民を対象としたアンケート調査の結果、住民の自助、共助の状況はいずれも十分な水準にないこと、自助と共助の間に補完的関係は見られず、備えが不十分なハイリスク世帯が多く存在することが明らかとなった。この状況は障害者や要介護者のいる世帯においてもみられ、保健医療の面からも地域レベルで備えを高めて行く必要性が明らかとなった。
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