2011 Fiscal Year Annual Research Report
白血病幹細胞に対する骨髄微小環境を模した抗白血病薬感受性検査法の開発
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22790523
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
伊藤 真以 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (70415545)
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Keywords | 臨床血液学 |
Research Abstract |
本研究では、白血病細胞の抗白血病薬感受性を調べるための培養検査法において、骨髄微小環境により近い条件で培養を行い、生体内での現象をより正しく反映する検査法の開発を目指す。 骨髄は低酸素下にあり、白血病幹細胞はNotchリガンド蛋白などを発現した骨髄支持細胞に接して存在すると報告されている。従来、細胞培養は細胞培養装置(炭酸ガス5%、酸素ガス21%)内の培養プレートで液体培養されてきたが、これは骨髄の環境とは大きく異なる。白血病幹細胞の薬剤感受性を細胞培養で解析するには、培養環境を骨髄微小環境に近い条件にした方が生体内での現象をより正しく反映すると考えられる。そこで、遺伝子組み換えNotchリガンドをコーティングした培養プレートを用い、低酸素培養装置にて細胞培養を行う新規培養法を生み出し、白血病幹細胞に対する薬剤感受性検査の臨床検査しての有用性を明らかにする。 23年度に行った研究結果より、低酸素刺激は白血病細胞に対して短期的な増殖抑制効果をもたらす傾向が見られた。また、従来、白血病幹細胞は骨髄微小環境において、細胞周期を静止期に留めることにより自己複製能を高め、分化を抑制することによってその存在を維持していると報告されているが、自己複製能を評価するコロニーアッセイ実験では、従来の報告とは異なり、低酸素刺激によりコロニーの形成が抑制されるという結果が得られた。 一方で、自己複製能に関与するとされるNotchシグナルが、低酸素刺激により活性化されることが遺伝子転写レベルで確認された。 これまでにも、幹細胞の増殖動態を見るために低酸素培養装置を用いた研究は行われているが、臨床検査として低酸素培養を行うのは、検索する限り報告はない。本研究で、より生体環境に近い培養法の有用性が確立されれば、白血病患者の治療において薬剤感受性の予測や予後の推定が可能となり、臨床検査として有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私のこれまでの研究で、白血病細胞の自己複製能、増殖、分化、アポトーシスにNotchシグナルが影響を与えることなどを報告してきた。これらの実験における方法論や手技などは習得済みであり、本研究へ発展させることによって新しい知見も得られおり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
骨髄環境を再現するため、本年度も引き続き遺伝子組み換えNotchリガンドをコーティングした培養プレートを用いて低酸素培養装置にて細胞培養を行う。従来型培養装置で見られる効果との差異を調べ、その差異をもたらした遺伝子や蛋白の発現の変化を検討することによって、培養法により効果に違いを生じさせた分子機序の解析を行う予定である。さらに、シトシンアラビノシドやイダルビシンなど抗白血病薬存在下での培養を行う予定である。 更に本年度は、細胞株を用いて得たこれまでの知見を基にして、急性白血病患者の血液から分離した白血病細胞を用いて同様の解析を行う。従来の培養法での薬剤感受性の結果と、骨髄微小環境を模した新規培養法での薬剤感受性の結果の差異を比較検討する。
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