2010 Fiscal Year Annual Research Report
一般住民における脳性ナトリウム利尿ペプチド測定の有用性と遺伝的素因の影響の探究
Project/Area Number |
22790544
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
高嶋 直敬 滋賀医科大学, 生活習慣病予防センター, 待任助教 (80435883)
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Keywords | 予防医学 / 循環器・高血圧 / 社会医学 / 分子疫学 |
Research Abstract |
NPPBは脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)をコードする遺伝子であり、BNPは左心機能の有用なマーカーであることが知られている。またBNPは体液量の調節等を通じて心保護作用があることがこれまでの報告から知られている。本年度は、タイピング済み遺伝型データと、ベースラインデータを統合し、natriuretic peptide precursor type B (NPPB)の上流域の一塩基変異(SNP)と、ベースラインデータとの関連について、粗解析を行った。また、サンプルサイズを拡大するために高島コホートで同意後収集済みの血液検体約200検体からDNAの抽出を行った。必要な変数がそろっている1717名を対象にした、横断解析の結果、NPPBのSNPと血中BNP濃度は有意な関連を認めた(p<0.0001)。また左室肥大(LVH)をSokolow-Lyonクライテリアに従って定義し、LVHとの関連について解析を行った。LVHあり群となし群の両方で、NPPBのSNPと血中BNP濃度の間には相関がみられた。またLVHあり群では有意な血中BNP濃度の高値を認めたにもかかわらず、NPPBのSNPとLVHとの関連は認めなかった。またNPPBのSNPと動脈硬化の一つのマーカーであるbaPWVとの関連も認めなかった。NPPBのSNPと収縮期血圧、拡張期血圧あるいは高血圧(140/90mmHg以上あるいは降圧薬服用)の有無のいずれで解析しても有意な結果は認めなかった。これらのことからNPPBのSNPは血中BNP濃度との関連は認められたが、LVHや血圧といった心保護作用に関連する指標との関連は認めなかった。このことから、NPPBのSNPによって上昇しているBNPは機能しないあるいは他の、生体内の制御機能によってマスクされている可能性を示唆するものである。
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