2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト乳幼児におけるアレルギー性疾患発症に関連する環境因子に関する分子疫学研究
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22790546
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
辻 真弓 産業医科大学, 医学部, 講師 (40457601)
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Keywords | アレルギー / 社会医学 / 分子疫学 |
Research Abstract |
小児のアレルギーの発症機序はいまだ不明瞭であり、明確な予防策も確立されていない。近年環境因子の関与が示唆されているが、分子疫学的見地から乳幼児を対象とした研究は国内外で少ない。よって今年度研究者は、現在までにサンプリングした対象者のうち未就学児を抽出し、分子疫学的研究を施行した。 【目的】分子疫学的手法を用いて、小児の喘息とPCB曝露の関係を示すバイオマーカーを探索することを目的として研究を行った。 【対象と方法】対象は平均月齢23ヵ月の未就学児30名(健常児15名、喘息児15名)である。児の保護者に質問票調査(同胞数、授乳形態、妊娠週数、両親の喫煙状況、児並びに両親のアレルギー疾患既往歴等)を行った。同時に児の血液を用いて、卵白・牛乳・小麦・ハウスダスト特異的IgE値(CAP-RAST)の測定、血清中PCB濃度の測定(#61+74,#99,#118,#138+146,#153,#156,#163+164,#170,#177,#178,#180+193,#183,#182+187,#194,#198+199)、リアルタイムPCR法を用いてIL8およびCOX-2のmRNA発現量を測定した。 【結果】健常児と比較し、喘息児の方にハウスダスト特異的IgE陽性者が多く認められた。その他の因子と喘息児間に有意な関連は認められなかった。次に健常児、喘息児それぞれにおいてPCB濃度とIL-8およびCOX-2との関係を調べた。喘息児においてのみPCB#163+164,#170,#177,#178,#180+193濃度とIL-8間に有意な相関が認められた。健常児、喘息児ともにPCB濃度とCOX-2間に有意な相関は認められなかった。 【結論】喘息児において血清PCB#163+164,#170,#177,#178,#180+193濃度が高いとIL-8 mRNAの発現量も高くなる可能性が示唆された。 この研究により、小児の喘息とPCB曝露の関係を示すバイオマーカーとしてIL-8が有効である可能性を示唆できたことは、環境因子とアレルギーの発症を検討する上で大きな一歩であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプリングも終了し、実際に実験・解析という分子疫学研究の施行へと順調に移行している。また「アレルギーの発症・増悪に関する因子と発症機序の解明」という研究目的において、今年度は環境中毒物質であるPCBとIL-8の関連を実際の生体試料を用いた研究として世界で初めて論文化し発表できたことは評価に値すると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度も生体試料並びに質問票調査を用いた研究を行う。すなわち、アレルギーの発症・増悪に関する因子、バイオマーカーの探索を行う予定である。具体的にはTh1,Th2,Th17系のサイトカインを順次測定し、それらと環境因子、特に質問票から得られた児の環境因子との関係を明らかにする。アレルギー疾患に関しても、喘息のみならず食物アレルギー、アトピー性皮膚炎とその他のアレルギー疾患に焦点をあてた解析も行っていく予定である。
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Research Products
(4 results)