2010 Fiscal Year Annual Research Report
低体重児出生に関わる胎盤機能障害への小胞体ストレスの関与及び生育後疾患発症リスク
Project/Area Number |
22790551
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
川上 隆茂 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (40441589)
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Keywords | 小胞体ストレス / 胎盤 / 胎児発育遅延 / グルコーストランスポーター |
Research Abstract |
母体へのある種の化学物質やストレス曝露は胎児の発育に影響するが、その感受性は母体がそれらに曝露される時期によって異なる。本研究ではまず、小胞体ストレッサーであるツニカマイシン(Tun)を異なる妊娠期(初期、中期、後期)に単回投与し、胎仔・胎盤影響に対して最も感受性が高まる時期を検討した。その結果、妊娠中期でのERストレス負荷が最も胎仔重量を低下させ、一方、妊娠後期でのTun処理は早産の確率を高めることを見出した。従って、ERストレスによる胎仔影響は妊娠期間中の負荷時期の違いにより感受性が異なることが示唆された。次いで、妊娠中期から分娩直前まで連日ERストレスを負荷することにより、母体・胎盤へ持続的にERストレスを負荷した場合の胎仔発育ならびに胎盤機能に与える影響について解析をおこなった。その結果、胎仔重量、胎仔重量ともにTunの用量依存的な低下が認められ、胎盤ではERストレスマーカーであるCHOPタンパク質発現量の上昇が認められた。このTun処理した胎盤の組織学的検索では、胎盤迷路部において栄養分や酸素の供給をおこなっている合胞体栄養膜細胞の過形成および正常な血管形成の阻害が観察された。これらの結果から、ERストレス負荷状態の胎盤では、母体から胎仔への栄養輸送能が低下している可能性が示唆された。実際、胎盤内および胎仔肝臓内グリコーゲン含有量の低下が認められた。さらに胎盤内で糖輸送を担っているSlc2a1(GLUT1)mRNA発現量はTun処理により用量依存的な減少を示したが、Slc2a3(GLUT3)mRNA発現量は用量依存的な増加を示した。以上、妊娠中期からの持続的な胎盤のERストレスは、胎盤内のグルコーストランスポーターの変調、栄養膜細胞の過形成および正常な血管形成の阻害を引き起こし、その結果として、胎仔への栄養供給を低下させ、子宮内での胎仔発育遅延を発症させる可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)