2010 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞を用いた造血幹細胞に対する化学物質の毒性影響評価
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22790552
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
伊藤 智彦 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究領域, 主任研究員 (60391067)
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Keywords | iPS細胞 / 造血幹細胞 / ディーゼル排気微粒子 / フタル酸エステル |
Research Abstract |
H23年度において、多能性幹細胞iPS細胞を用いた造血幹細胞系への分化誘導における毒性評価系の検討および環境化学物質の毒性評価の実施を試みた。 まず、iPS細胞を低吸着条件下で培養し、分化誘導させ胚様体(EB)を形成させた。EBを構成する細胞について、蛍光標識された各種の抗体で染色後、フローサイトメトリーで解析した。その結果、hematopoietic progenitorのマーカーであるCD41の陽性細胞が約10%発現されていたが、CD34の発現はこの条件では非常に弱かった。また、後期の造血幹細胞系に発現するCD45の発現も弱いながらも誘導されていた。 次に、環境汚染物質として知られるディーゼル排気微粒子(DEP)の抽出物(DEPe、0.1~10μg/ml)およびプラスチック可塑剤であるフタル酸エステル(DEHP、0.1~10μM)をEB形成時に曝露して表面抗原を指標に解析した。その結果、DEPeは濃度依存的にCD41陽性細胞の割合を増加させた。また、DEHPは低濃度の0.1μMでCD41陽性細胞の割合を増加させたが、濃度が高くなるにつれて影響は弱まった。一方で、両化学物質ともCD45の発現には影響しなかった。さらに、高濃度のDEHP曝露では、EBの成長が顕著に抑制されており、増殖抑制を引き起こすことも示唆された。 以上の結果、iPS細胞を用いた培養系において、DEPeやDEHPがhematopoietic progenitorの形成に影響を与えることが示唆された。
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