2011 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞を用いた造血幹細胞に対する化学物質の毒性影響評価
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22790552
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
伊藤 智彦 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 主任研究員 (60391067)
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Keywords | iPS細胞 / 造血幹細胞 / フタル酸エステル / エストロゲン受容体 / ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体 |
Research Abstract |
昨年度の本研究により確立した多能性幹細胞iPS細胞から造血幹細胞系への分化誘導系を用い、環境化学物質の毒性影響およびその機序の解析を行った。 このiPS細胞からの造血幹細胞系への分化において、最も未分化な状態ではGFP陽性、中胚葉への分化が進むとFLK1陽性となり、造血幹細胞系に分化するとCD41陽性となることがわかり、これらの分化マーカーを用いて解析を行った。プラスチック可塑剤であるフタル酸エステル(DEHP)をiPS細胞に曝露すると、高濃度(10μg/ml)においてGFP陽性細胞の割合が増加、CD41陽性細胞の割合が減少し、DEHPは特にiPS細胞から中胚葉への分化初期段階に影響を及ぼすことが考えられた。一方で、DEHPの代謝産物であるMEHPについては、低濃度(0.1μg/ml)で逆にCD41陽性細胞の割合を増加したため、分化を促進する可能性が考えられた。次に、フタル酸エステルの影響について、核内受容体である女性ホルモン受容体(ER)やペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体(PPAR)の関与を調べた。DEHPによって活性化されるERについては、iPS細胞の分化に関与していなかった。MEHPによって活性化されるPPARについては、特にiPS細胞から中胚葉への分化段階において、PPARガンマが抑制に、PPARベータ/デルタが促進に働くことが示された。 以上の結果、iPS細胞を用いた培養系において、DEHPやMEHPといったフタル酸エステルが分化に影響を及ぼすこと、またそれらの影響はこれまで報告されている機序とは異なる複雑な経路を介して作用すると考えられた。また、胎児期でのフタル酸エステルの曝露が免疫系の発達に悪影響を及ぼす可能性が示唆された。
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