2010 Fiscal Year Annual Research Report
保健統計における系統的測定誤差の修正のための統計的手法の開発と応用
Project/Area Number |
22790559
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池田 奈由 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (20573603)
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Keywords | 保健統計 / 測定誤差 / 統計手法 / 保健指標 / 健康調査 |
Research Abstract |
本研究に適切な手法を開発するため、系統的な測定誤差の修正に関する最新の統計手法をレビューした。我が国における保健統計調査の個票データの目的外使用申請を行い(国民健康・栄養調査と国民生活基礎調査)、さらに他の国々における保健統計調査のうち公表されている個票データを取得した。これらのデータに統計的手法を応用し、以下の分析に着手した。 1.国民生活基礎調査の標本抽出方法に関して、都道府県の人口の大きさに関わらず一定の抽出地区数を割り当てる現在の抽出方法が系統的測定誤差をもたらしている可能性を検討した。人口規模に比例した二段階無作為抽出法と比較するため、仮想的人口データを作成し、二乗平均平方根誤差を用いたシミュレーション分析を行い、後者に比較して推定誤差が大きくなることを示した。本分析結果は、我が国最大の健康調査のデータから得られる情報の精度の向上を促進し、国民の健康や保健医療制度に関する正しい理解を図るために重要であり、査読付学術雑誌へ投稿中である。 2.健康調査で一般的に用いられている自己申告に基づく測定誤差を、客観的測定値を用いて調整するための二つの分析を開始した。まず一つ目は、米国における複数の健康調査の個票データから視力に関する自己申告値と客観的測定値を用いて、自己申告バイアスを検出し調整することにより、米国国民の視力の長期的推移を検討する分析である。二つ目は、我が国における身長と体重の自己申告値と客観的測定値を用いて、同様に自己申告バイアスを調整し、都道府県レベルの肥満度とその分布を推定することにより、自己申告値に基づく健康指標を用いた都道府県評価を行うための方法を検討する分析である。これらの分析は、費用面から健康調査で一般的に使い易い自己申告を活用し、長期系列や都道府県・市町村レベルでの国民の健康に関するより一層精度の高い情報を得るために重要である。
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