2012 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪酸摂取の認知機能に及ぼす影響に関する長期縦断疫学研究
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22790584
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
大塚 礼 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 予防開発部, 室長 (00532243)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 疫学 / 脂肪酸 / 認知機能 |
Research Abstract |
本研究は食事を介した認知機能の低下予防を目的とし、15年以上実施されてきた地域在住中高年者を対象とした長期縦断疫学調査から、脂肪酸と認知機能との関連について検証するものである。脂肪酸摂取量は3日間の秤量式食事記録調査から算出し、認知機能は認知機能障害スクリーニング検査(MMSE)およびウェクスラー成人知能検査を用いて評価する。さらに生体内脂肪酸濃度の一指標として血清脂肪酸濃度を用い、認知機能との関連性についても検討する。 脂肪酸と認知機能との関連を検討する上で、年齢が交絡要因として介在している可能性が考えられる。そこで本年度は認知機能との関連が報告されつつある不飽和脂肪酸(EPA, DHA,アラキドン酸)の血清脂肪酸濃度については、特に年齢群間差に注目した解析を実施した。高齢群ほど、血清EPA、DHA濃度は高値を示すこと、一方血清アラキドン酸濃度は低値を示すことを明らかにした。またEPA、DHAは必須脂肪酸であり血中濃度は食事による脂肪酸摂取量の影響を強く受けることから、食事摂取量を加味した解析を実施した。その結果、血清EPA, DHA,アラキドン酸濃度の年齢群間差は、食事による脂肪酸摂取量等を考慮しても消失しないことを確認し報告した。 一方で、n-3系およびn-6系多価不飽和脂肪酸摂取量と認知機能との関連を検討し、n-6系多価不飽和脂肪酸摂取量が多い群ほど、教育歴など多変量調整後も、ウェクスラー成人知能検査で評価した符号得点(情報処理能力)が高い結果を得た。さらに血中濃度と符号得点との関連性では、n-6系多価不飽和脂肪酸の中でも血清リノール酸濃度が高い群ほど符号得点が高く、ベースラインの血清濃度を調整しても、血清リノール酸濃度が高い群ではその後の符号得点の低下が少ない結果を見出した。このように認知機能と関連を有する可能性が高い脂肪酸の絞り込みを進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した計画にそった内容が、順調に検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の方向性は申請書に記載した通り進める予定である。平成25年度は引き続き、脂肪酸摂取量と認知機能との関連を検討する。同時に、血中脂肪酸濃度と認知機能との関連性についても詳細に解析し、認知機能低下を予防する可能性の高い脂肪酸の同定を行う。これらの解析結果と、脂肪酸摂取量と血中脂肪酸濃度との関連性を踏まえた上で、どのような脂肪酸をどの程度摂取していることが認知機能の維持あるいは低下予防に有効と考えられるかを疫学的に検討する予定である。
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Research Products
(6 results)