2011 Fiscal Year Annual Research Report
広域的な拡散が懸念される結核菌臨床分離株の疫学情報・ゲノム情報に関する統合的研究
Project/Area Number |
22790585
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Research Institution | Osaka City Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
和田 崇之 大阪市立環境科学研究所, 研究主任 (70332450)
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Keywords | 感染症 / ゲノム / 衛生 / 社会医学 / 分子疫学 / 公衆衛生 / 結核 / 細菌 |
Research Abstract |
結核を引き起こす病原体である結核菌では、近年ようやく遺伝子多型に関する知見が蓄積されつつある。結核患者から分離培養された菌株を遺伝子多型に基づいて分類/定義することにより、個々の菌株伝播を追跡することが可能となってきた(結核菌の分子疫学)。本課題では、「遺伝子多型からは同一」であることが示唆されるにもかかわらず広域・長期間にわたって分離される遺伝型を「拡散性クラスター型(putative Expanding Cluster Types, pECT)」と定義して着目し、その疫学的特性とゲノム比較による遺伝学的個性を分析した。 関西地域における臨床分離株の分離傾向から、9種類のpECTを抽出した。全国各地での分離例から、特に広域伝搬が疑われたpECT07(M株)について菌株収集を行い、濃厚接触例(2株)および同一患者再発例(2株)を含めた計10株について次世代シーケンサーGenetic Analyzer II(Illumina)を用いてゲノム全域の配列情報を獲得し、マッピング分析に基づくゲノム比較を実施した。結果、東北、関東、関西、九州それぞれで分離された菌株間の近似性は必ずしも由来地域に起因せず、きわめて複雑な伝搬様式が浮かび上がった。pECT04(2株)でのゲノム比較では、各株の固有変異が数多く見いだされ、現行の遺伝型で同一株と考えられる菌株間においても、より詳細・正確な感染源調査が進められる可能性を示している。本研究において得られた成果は、結核特有の長期潜伏や都市間での患者の長距離移動など、我が国における結核菌の伝搬経路を推定する上で新規かつ有用な情報を寄与するものである。
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Research Products
(4 results)