Research Abstract |
溺死の際,どのような水棲の微生物(藍藻,細菌,古細菌,珪藻,鞭毛藻,緑藻など)が,溺水の吸引と共に,体内に侵入ないし増殖しているのか,珪藻以外について,その情報はあまり明らかにされていない.そこで,本研究では次世代シーケンサーGS FL XSystem (Roche,454)の優れた並列解析能力を利用し,溺死体の体内に侵入したあらゆる微生物を網羅的に解析したいと考えた.まず藍藻,細菌,古細菌,珪藻,鞭毛藻,緑藻など様々な水棲微生物の16S rRNA遺伝子についてアライメント解析を行った.そしてできる限り多くの種類を,可能な限り属レベルで識別可能な可変領域(増幅領域)及び保存領域(プライマー領域)を決定した.次いでこれまで我々が主に溺死例から単離した細菌72株についてプライマーの有効性を確認した.さらに実際の淡水及び海水溺死例の2例について,血液試料(左心血,右心血,大腿静脈血),臓器試料(右肺下葉内部,左肺上葉辺縁部,腎臓,肝臓)及び水試料(遺体発見現場)から全DNAを抽出・精製した.次いで,各試料中の微生物の可変領域をPCRで増幅後,精製・定量し,エマルジョンPCRを行った.さらに,ピロシーケンスを行いGenome Sequencer FLX system (454)を用いて各試料を解析した.その結果,我々の設計したプライマーを用いることで,水中死体の血液や臓器中,そして現場水から多様な水棲微生物(Cyanobacteria, Bacillariophyceae (diatom), Cryptophyceae, Dictyochophyceae, Chrysophyceae, Trebouxiophyceaeなど)が検出可能であり,そしてこの解析によって得られた水棲微生物に関する膨大な情報は,実際に溺死の診断を行う際に有力な根拠を示し得ることが示された.
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