2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22790600
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
井濱 容子 琉球大学, 医学研究科, 助教 (80347137)
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Keywords | 吸引損傷 / 陰圧 / 挫滅症候群 / 出血性ショック |
Research Abstract |
本研究の目的は、局所に負荷された陰圧が生体に与える影響を明らかにすることである。当初の研究計画・方法に記載した通り、ラットの後肢に安定して陰圧(-675mmHg)を負荷できるモデルを作成した。負荷時間による変化を観察するために30、60、90、120ならびに180分群と対象群(180分麻酔のみ)を設定して比較検討した。 (1)外観:損傷肢は負荷時間とともに腫大し、皮膚変色を認めた。30分程度から皮膚に水庖が形成され、次第に破裂して出血を生じた。(2)重量:30、60、90分群では時間経過とともに重量増加を認めたが、90、120、180分では重量に大きな変化を認めなかった。(3)腹部大動脈からの採血量:陰圧負荷時間とともに採血量は減少し、180分群では対象群の約50%となった。(4)生化学的検査:血清中KとCKは120、180分群で有意に上昇したが、Ca、AST、ALT、LDH、ミオグロビンは有意差なし。(5)免疫学的検査:血清中TNF-α、IL-6は上昇なし。(6)組織学的検査:一視野あたりの筋細胞数、変性筋細胞の割合について検討したところ、経時的に一視野中の筋細胞は減少し、変性筋細胞の割合は増加した。また、観察部位を浅層、中間層、深層に分けて検討したところ、深層で最も変化が著明であった。 以上の結果から、局所への陰圧負荷によって比較的早期から外表の変化が出現し((1))、損傷肢の重量増加は90分程度で安定した((2))。陰圧負荷時間とともに採血量が減少したこと((3))から、全身の循環血液量が減少していることが推測される。一方、生化学的ならびに免疫学的データに変化はなかった((4))が、陰圧負荷直後に死亡させたことによるかもしれない。最後に、これまで局所的な陰圧負荷によって形成される組織学的変化についての研究はなく、本研究で明らかになった組織所見((5))は局所の陰圧損傷として貴重である。
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