2011 Fiscal Year Annual Research Report
漢方薬「六君子湯」のカロリー制限模倣薬としての可能性を検証する
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22790620
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小松 利光 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 技術職員 (70380962)
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Keywords | 東洋医学 / カロリー制限 / 抗老化 |
Research Abstract |
本研究では,漢方薬「六君子湯」の短期投与が血中のグレリン濃度を上昇させ,視床下部NPYの発現を介して摂食を亢進するメカニズムが,カロリー制限(CR)で見られる現象と類似している点に着目し,六君子湯(RKT)のカロリー制限模倣薬としての可能性を検証した。前年度の実験で、自由摂食群(AL)に長期にRKTを与えた場合、グレリン濃度に変化はなく脂肪蓄積を引き起こしたのに対し、摂食量をALの95%程度に抑えたRKT群ではグレリン濃度の上昇が認められた。このことからごく僅かなカロリー制限にRKTを補助的に与えることで、70%CRと同様の効果を得られる可能性が示唆された。本年度の実験では、CRに応答する転写因子のDNA結合活性を分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)活性によって検出することのできるトランスジェニックマウス(CRISP)のメスを用いて、生後18週齢よりAL群,95%CR群、95%CR+2%RKT、70%CR群に分けて12週間以上飼育した。血中のSEAP活性は95%CRとRKT投与群で有意な差は見られなかった。これはRKTの効果はCR応答性転写因子の活性を介していないことを示している。活性型グレリン濃度は95%CR群に対し、RKT投与群が有意に高く、また70%CR群とほぼ同じレベルであった。また、脳内NPY mRNAレベルは変化しなかったが、摂食抑制性ペプチドCART mRNAレベルがRKT投与群で70%CR群と同様に有意に抑制されていた。これは長期のRKT投与では、NPYではなく摂食抑制性ペプチドCARTの発現調節を介していることを示唆している。前年度の実験のRKT投与が酸化ストレス耐性を向上させる結果と合わせると、RKT投与は一部ではあるがCRのポジティブな効果を模倣することが期待できる。次年度はRKTが寿命に与える影響を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
経時的実験集団の作製については、飼育スペースの関係上、6ヶ月と24ヶ月齢集団のみ作製された。寿命集団の作製では、若年期寿命集団への投与実験は中止されたが、老年期からの寿命集団は作製・飼育している。また6種類の実験中4つは予定通り実行されている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度では、老年期からの六君子湯投与の寿命への影響を検証する実験を開始する。当初C57BLマウスを使用する予定を変更し、NPY KOマウスを使用することで、NPYの重要性も合わせて検証する。六君子湯投与方法も、グレリンとNPYのレベルが高く維持されるよう投与2-4週間ごとに休止期間を設定する方法に変更する。
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