2010 Fiscal Year Annual Research Report
HCV変異株培養系を用いたサイトカインシグナル抑制機構の解析
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22790633
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中川 美奈 東京医科歯科大学, 医学部附属病院・消化器内科, 助教 (30401342)
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Keywords | HCVレプリコンシステム / HCVコア蛋白変異株 / インターフェロン(IFN)治療抵抗性 / インターロイキン(IL)6 / SOCS3 / 小胞体(ER)ストレス |
Research Abstract |
IFN治療抵抗性に関わる分子の特定は、治療効果の事前予測に利用できる可能性があると同時に、難治症例に対する新規薬剤の開発につながる可能性がある。申請者は、Type-Iインターフェロン(IFN)(IFN-α,β)の抗ウイルス機構の解析を通じてIFN抵抗機序を明らかにするため、独自に開発した変異HCV培養細胞レプリコンシステムを用いて、HCV増殖制御に関連する宿主・ウイルス蛋白やIFNの抗ウイルス機構に抑制的に働く細胞内IFNシグナル関連蛋白とHCV蛋白の相互作用の解析を行い、新たな抗ウイルス療法開発の基盤とすることを目的に研究を行った。 まず、申請者らは臨床的に治療抵抗型であるHCVコア70と91のコア蛋白変異株培養系を用いたIFNシグナル系におけるサイトカイン抑制機構の解析を行ったところ、以下の結果を得た。1)HCVコア蛋白変異株ではウイルス細胞内のRNAおよび蛋白合成は野生株と比較し同等もしくは亢進していた。2)HCVコア蛋白変異株ではウイルス複製は保たれているものの、粒子形成および分泌低下を認めた。3)HCVコア蛋白変異株では小胞体(ER)ストレス蛋白の発現誘導をみた4)IFN治療抵抗株ではIFNシグナル系の抑制因子であるSOCS3の発現亢進およびIFN誘導遺伝子(ISG)発現低下をみた。5)IFN治療抵抗株ではSOCS3産生に関与するIL-6発現も亢進しており、臨床検体でも治療抵抗症例でIL-6持続高値であることが確認された。以上よりIFN抵抗性には多機能サイトカインであるIL-6やERストレスの関与が示唆された。IL-6は肝発癌への関与も報告されており(Naugler, 2007 Science)、さらに詳細な解析により治療抵抗性の機序だけでなく発癌への関与についても新たな知見が得られる可能性が示唆され、引き続き検討を続けている。
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Research Products
(27 results)