2010 Fiscal Year Annual Research Report
難治性C型肝炎の完全治癒を目指した新規ウイルス制御機構の解明
Project/Area Number |
22790636
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
矢野 雅彦 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (70529693)
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Keywords | C型肝炎ウイルス / B型肝炎ウイルスX蛋白質 / 酸化ストレス / ウイルス複製制御機構 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
1、酸化ストレスは細胞内のどの様なシグナル経路・分子活性を介して抗ウイルス効果を示すのか? 申請者はこれまで、酸化ストレス誘導性のリン酸化酵素ERKが抗ウイルス制御機構に関与していることを見出している。その詳細な解析をするにあたり、C型肝炎ウイルス(HCV)のコア蛋白が細胞内の抗ウイルス的インターフェロン(IFN)システムや酸化ストレス発生を撹乱することに着目し、同様の作用を示すとされるB型肝炎ウイルス(HBV)X蛋白(HBX)発現マウスや細胞を用いた。その結果、HBXにより強力に誘導された発癌抑制分子p21の発現が、抗ウイルス剤のIFNによって抑えられたことを見出した。更に、HBX誘導性p21は優位に細胞質内に局在し、これがHBXによる細胞増殖促進、即ち発癌機構に関与していることが明らかになった。一方、IFNによりp21は核内へ移行されたから、p21の細胞内局在が細胞増殖だけでなくウイルス複製も制御している可能性が示唆された。 2、p21の細胞内局在と酸化ストレス誘導性ERKは関連しているのか? 今回の解析で、HBXによる細胞質内p21発現増強に、HBXとの直接的な相互作用によって活性化されたPKCαが介在していることも明らかになった。ところで、ERKの活性化にもPKCαが関与していることが知られている。PKCαはIFN処理で不活化され、これによりp21が細胞質から核内へ移行することが見出された。一方、ERKはHBX発現およびIFN処理でも活性化された。p21と同様、活性化ERKも細胞内の局在によって細胞に与える影響が異なることが知られており、PKCαとIFNの各々によって活性化されたERKでは作用が異なる可能性が示唆された。今後、HCV複製下でのp21とERKの細胞内局在を解析することでウイルス複製にどの様に関与しているのかを明らかにし、それに対する制御機構をより詳細に解明したい。
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