2010 Fiscal Year Annual Research Report
Hes1に対するRNA干渉を用いた大腸癌増殖・分化制御の試み
Project/Area Number |
22790642
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上尾 太郎 京都大学, 医学研究科, 医員 (30569611)
|
Keywords | Hes / 大腸癌 / RNA干渉 / 増殖制御 / 未分化性の維持 |
Research Abstract |
我々は、ヒト大腸癌モデル動物であるApc^<Min>マウスに対して、生後より消化管上皮特異的にHes1を欠失させると、成体にて出現する腫瘍細胞の大半が増殖をとめ、正常腸上皮細胞へと分化することを既に見出している。しかも重要なことに、腫瘍以外の正常腸上皮においては、Hes1が欠失していても、何ら影響が見られず、Hes1が新規癌治療のターゲットになりうると考えられた。そこで、Hes1に対するRNA干渉を用いた大腸癌の増殖・分化制御を試みることにした。 一方、我々は、正常腸上皮細胞はHes1に加えてHes3ならびHes5も欠失させると、上皮幹細胞の増殖が抑制され分泌系細胞への分化が亢進することを見出した。Hes1に対するRNA干渉の実験にさきだち、腫瘍細胞の増殖抑制・分化誘導が一層進むことを期待して、Apc^<Min>マウスに対して、生後より消化管上皮特異的にHes1/3/5すべてを欠失させたが、Heslを欠失させた際と同程度の増殖抑制しか得られなかった。また、薬剤誘導性にHes1が欠失するマウスを作成し、このマウスを用いて、既に腫瘍が形成されている状態でHes1を欠失させることで、腫瘍の維持におけるHes1の役割を検討した。薬剤を投与すると、成長している腫瘍においてもHes1が欠失した結果、増殖が抑制され正常上皮へと分化していた。以上より、Hes1が単独で、腫瘍細胞の増殖・未分化性の維持に関与しており、一方正常上皮幹細胞の増殖や分化制御にはHeslに加えてHes3とHes5が必要であることが明らかになった。これらの結果は、Hes1が新規癌治療のターゲットになることを一層支持するものであった。
|
Research Products
(3 results)