2011 Fiscal Year Annual Research Report
消化管粘膜における上皮幹細胞マーカーの同定、粘膜再生・発癌メカニズムの解析
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22790676
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
福井 寿朗 関西医科大学, 医学部, 助教 (60402905)
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Keywords | 発生・分化 / シグナル伝達 / 上皮幹細胞 / 細菌 / 癌 |
Research Abstract |
最新の幹細胞、細胞周期研究の知見や、我々がこれまで検討してきた消化管疾患モデルマウスの知見を応用することにより、胃粘膜上皮における有用な新規組織幹細胞マーカー(pSmad2/3L-Thr)を同定し動態を明らかにすることが出来た。 加えてその他の消化管上皮における検討と、各疾患モデルにおける上皮再生治癒のメカニズムを解析することにより、消化管粘膜障害における粘膜再生メカニズムの一部を解明することが出来た。 1)正常マウスの食道・小腸・大腸粘膜や、インドメサシン起因性胃小腸炎モデル・DSS起因性大腸炎モデルといった自験例のあるモデルを作製し、Ki-67とリンカー部スレオニンリン酸化Smad2/3蛋白(pSmad2/3L-Thr)の蛍光二重免疫染色法にて当該細胞を検出し、胃粘膜以外の組織上皮幹細胞としての適否を確認したところ、胃のみならず、食道、小腸、大腸にても、これまで幹細胞が存在すると考えられて来た部位に特異的に当該細胞が検出された。これらの細胞は、幹細胞の性質の一つである、BrdU長期陽性細胞(LRC: Label Retaining Cells)であることが確認された。 2)特に大腸炎モデルについてはpSmad2/3L-Thr発現細胞を病変部位的、経時的に確認することにより、病変の進行・粘膜再生治癒状況とpSmad2/3L-Thr陽性細胞の出現状況を比較したところ、粘膜壊死期には著減し、再生期になり著増していた。この所見も当該細胞が組織幹細胞であることを推測させる結果である。今後は治療としての可能性(粘膜再生におけるpSmad2/3L-Thr特異的細胞周期促進刺激薬)を探求する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は胃粘膜を中心に検討し、組織幹細胞の可能性を検討していた。我々の予想通り幹細胞マーカーになり得ることが確認され、論文発表することが出来た。また食道、小腸、大腸と言った他部位の消化管粘膜においても、現在までの研究にて、やはり幹細胞マーカーであると考えられる結果を得ており、ひいては、全臓器における幹細胞マーカーになり得るのではないかと現在では考えている。まずは消化管粘膜について詳細に検討し、当該研究課題期間終了時までには論文化出来ると考えている。他臓器においては他分野の専門家とも協力し、今後の検討課題と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究にて、pSmad2/3L-Thrは汎消化管上皮幹細胞のマーカーとなることが確認出来た。今後はヒト検体にて同様に幹細胞マーカーになりうるか否かの確認と、腫瘍性変化におけるpSmad2/3L-Thrの発現を、まずはマウス疾患モデルにて確認し、その後、ヒト胃癌、大腸癌、食道癌における発現を確認する。このことにより組織幹細胞と癌幹細胞の関係や、癌の発育に関するSmad蛋白の発現の変化や、炎症から腺腫,発癌のメカニズムが解析出来ると考えている。
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Research Products
(3 results)