2010 Fiscal Year Annual Research Report
心血管系の発生分化・循環器疾患発症を制御する転写調節機構の解明
Project/Area Number |
22790689
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 剛 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20422305)
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Keywords | 分子血管病態学 / TGF / BMP |
Research Abstract |
申請者はこれまでに転写因子δEF1が、Transforming growth factor(TGF)の刺激を受けて血管平滑筋細胞の分化を誘導し、障害を受けた動脈の新生内膜形成を調節することを報告した(Developmental Cell 2006年)。本研究では、この成果を基礎として、δEF1の近縁転写因子で、同じくTGF/Bone morphogenetic protein(BMP)シグナルで制御されるSmad Interacting Protein 1(SIP1)の心血管特異的SIP1ノックアウトマウスの解析から、心血管系発生・分化及び血管病発症の制御機構を調査している。 血管平滑筋細胞を主体にSIP1のノックアウトを誘導したマウスでは、ホモゲナウス・コンディショナルノックアウトマウスが出生直後に死亡し、大動脈弁の肥厚と、臍帯動脈の中膜平滑筋層の菲薄化を認めた。心臓組織標本の調査から、弁の間質細胞のアポトーシス減少の所見が得られており、現在、培養細胞で、その徴候の確認を行い、機序解明を進めている。 血管内皮細胞特異的にノックアウトを起こすマウスはホモゲナウス・コンディショナルノックアウトマウスが胎生中期に脳出血を起こし死亡した。このマウスのembryoで血管内皮細胞の免疫染色を行ったところ、頭部血管の分枝・増生が亢進している所見が得られ、SIP1が血管内皮細胞において、血管の新生のコントロールを行っている可能性が考えられた。個体発生段階での調節の他、成長後の個体での腫瘍血管形成、あるいは糖尿病の網膜血管新生などにSIP1が関与していることが推察される。薬物によりノックアウトを誘導するマウスの準備を進めており、出生直後、或いは成長した個体で、腫瘍移植・網膜血管新生などの実験を行い、SIP1転写調節の治療応用も視野に入れ研究を進める予定である。
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