2011 Fiscal Year Annual Research Report
心血管系の発生分化・循環器疾患発症を制御する転写調節機構の解明
Project/Area Number |
22790689
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 剛 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20422305)
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Keywords | 分子血管病態学 / TGF / BMP |
Research Abstract |
申請者は転写因子δEF1が、Transforming growth factor(TGF)の刺激により血管平滑筋細胞の分化を誘導し、障害を受けた動脈の新生内膜形成を調節することを報告した(Developmental Cell 2006年)。本研究では、この成果に基づき、δEF1の近縁転写因子で、TGF/Bone morphogenetic protein(BMP)シグナルで制御されるSmad Interacting Protein 1(SIP1)の心血管特異的SIP1ノックアウトマウスの解析から、心血管系発生・分化及び血管病発症の制御機構を調査している。 血管平滑筋細胞を主体にSIP1のノックアウトを誘導したマウスでは、ホモゲナウス・コンディショナルノックアウトマヴスの多くが出生直後に死亡し、大動脈弁の肥厚と、臍帯動脈の中膜平滑筋層の菲薄化を認めた。心臓組織標本の調査から、肥厚した大動脈弁はプロテオグリカンとコラーゲンを多く含み、マウス胎児線維芽細胞の調査で、プロテオグリカンの代謝の調節に関わるADAMTS5などの遺伝子の発現が、SIP1のノックアウトにより変化することを解明した。 ヒトにおけるSIP1の遺伝子変異では高率に心奇形を、特に左室・右室の流出路に起こすが、プロテオグリカンの代謝異常でも心奇形が多く起ることが報告されており、ヒトにおける心奇形発生の機序に迫る成果が挙げられるものと考えられる。 血管内皮細胞特異的にノックアウトを起こすマウスは、ホモゲナウスノックアウトマウスが胎生中期に脳出血を起こし死亡するが、血管内皮細胞の免疫染色を行うと、頭部血管の分枝・増生が亢進していていた。SIP1が血管新生・形成に関与すると考えられ、薬剤誘発性SIP1ノックアウトマウスが準備できており、この個体で腫瘍血管新生を調べ、悪性腫瘍治療に有用な治験が得られると考えられる。
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