2011 Fiscal Year Annual Research Report
心臓リモデリング制御による新規心不全治療法創成の分子基盤の構築
Project/Area Number |
22790693
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 賢忠 東京大学, 医科学研究所, 助教 (70396878)
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Keywords | 心肥大 / 心臓リモデリング / HEXIM1 / 右心肥大 / 肺高血圧症 |
Research Abstract |
【研究目的】慢性心不全(以下、心不全)は、いまだに予後不良の疾患であり、今後超高齢化社会を迎えるわが国においても克復すべき喫緊の課題のひとつである。近年、心負荷への代償機構である『心臓リモデリング』自体が心不全発症・進展の本態であることを示唆する報告が相次ぎ、心臓リモデリングに関与する細胞内シグナル伝達経路や転写因子が数多く同定され、それらをターゲットとした分子治療開発も始められている。我々が転写を抑制性に制御する新規核蛋白質として解析をすすめてきたHEXIM1は、心肥大進展の鍵分子である転写伸長促進因子P-TEFbとの相互作用を介して心臓リモデリングに関与している可能性を示唆する証左が蓄積している。そこで、本申請課題では心肥大を中心とした心臓リモデリングの分子機構を、新たにHEXIM1を基軸としてより詳細に解析し、その病態解明ならびに、HEXIM1による新規心臓リモデリング抑制・心不全治療開発の分子基盤を構築することを目的とする。 【研究方法】心筋培養細胞(NRCM)をHEXIMI野生型あるいはP-TEFb抑制活性消失変異体HEXIM1dNの過剰発現・非過剰発現下で培養後各種解析を行った。また、野生型マウスおよび心筋特異的HEXIM1発現マウス(HEX-CTg)を低酸素下飼育して肺高血圧症(PH)を誘導し右心肥大にあたえるHEXIM1の心筋過剰発現の影響を解析した。 【成果】NRCMにおいてHEXIM1野生型過剰発現はエンドセリン1(ET-1刺激による、細胞肥大、肥大マーカー遺伝子発現誘導、P-TEFb活性化を抑制したが、HEXIMdN過剰発現は影響を与えなかった。NRCMをPH治療薬PGI2で刺激するとHEXIM1蛋白発現が増加した。また、PGI合成酵素ノックアウトマウスではHEXIM1蛋白発現が低下していた。低酸素飼育による右室肥大、右室心筋細胞径肥大、血管新生増加、右室拡張終期径拡大の誘導はHEX-CTgでは認められなかった。 【研究成果の意義、重要性】 心筋選択的HEXIM1の過剰発現はPHに伴う右心肥大の進展を抑制する可能性が示唆され、その分子機構としてHEXIM1によるP-TEFb活性化抑制を介した、心筋細胞肥大抑制、血管新生抑制が考えられた。PGI2は心筋細胞におけるHEXIM1発現を増加させる可能性があり、右心肥大にも抑制的に働いている可能性が示唆された。心肥大抑制により、心機能保持、生命予後を延長させる可能性が示唆されており、HEXIM1機能や発現量を制御する手法は新たな心肥大、心不全治療薬として応用出来る可能性を示唆する結果と考えられた。
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