2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22790705
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
原 哲也 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (70547504)
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Keywords | 脂質代謝 / 動脈硬化 / 循環器 / 分子血管病態学 / 生活習慣病 / 高比重リポ蛋白 |
Research Abstract |
高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)は動脈硬化に対して抑制的に働くことが知られている。しかしながら、善玉であるはずのHDL-Cが炎症や何らかの病的状態においては、その善玉としての作用が失われ、むしろ「悪玉」として働きうることが明らかになっている。血管内皮リパーゼ(EL)はHDL-C濃度を規定しており、EL阻害により血中HDL-Cが上昇する。本研究では、EL阻害により上昇したHDL-Cの質的変化を検討し、ELが動脈硬化の抑制にむけたHDL増加療法のターゲットとなりうるかを検討した。 EL阻害することにより増加したHDL粒子の抗動脈硬化性が明らかにするため、我々の作製したEL欠損マウスから採取精製したHDL(EL-/-HDL)と、野生型マウスから採取したHDL(EL+/+HDL)を用いて、EL完全不活性化状態のHDLの質的変化を、種々の細胞実験を用いて検討した。 リポポリサッカライド(LPS)の中和効果はEL-/-HDLの方がEL+/+HDLよりも強かった。炎症性サイトカイン刺激による接着分子の発現抑制効果、LDLの酸化抑制効果、HDL関連酵素活性、コレステロール逆転送系は、EL-/-HDLとEL+/+HDLとの間で有意差は認められなかった。 以上のことから、EL-/-HDLはEL+/+HDLと比べて同等またはより強い抗炎症作用を有していることが明らかとなった。すなわち、ELを阻害して上昇するHDLは少なくともin vitroの系においては「善玉」であることが示唆された。
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