2010 Fiscal Year Annual Research Report
急性肺損傷における新規生理活性脂質リゾホスファチジン酸の役割解明
Project/Area Number |
22790745
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 充啓 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (00396483)
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Keywords | 急性肺傷害 / 活性化脂質 / 炎症 / 組織修復 / 細菌性肺炎 |
Research Abstract |
急性肺損傷(ALI)およびその重症型の急性呼吸促迫症候群(ARDS)は、肺における過剰な炎症と肺血管透過性亢進を特徴とする急性呼吸不全を呈する症候群である。ALI/ARDSは依然40%以上の高い死亡率を有し、治療法の更なる進歩が必要とされている。リゾボスファチジン酸(LPA)は酵素オータキシン(autotoxin, ATX)により産生されるリゾリン脂質の一つで、多様な作用を持つ新世代の生理活性脂質である。代表研究者はこれまでに、各種急性肺損傷モデルマウスにおける血中・気管支肺胞洗浄液中のATX酵素活性を検討し、気管支肺胞洗浄液中のATX酵素活性は各急性肺損傷モデル群において有意に上昇しており、特に誤嚥性肺炎モデルである塩酸惹起急性肺損傷モデルで著名に上昇していることを発見した。今回代表研究者はLPAおよびATXの急性肺損傷における役割を明らかにするために、抗ATX抗体を投与により全身のATX活性が抑制されたマウスを用意し、塩酸投与、肺炎球菌またはLPSにより急性肺損傷を惹起、コントロール抗体投与マウスと肺損傷の程度を比較した。ATX活性が抑制されたマウスにおいて、塩酸投与24時間後および48時間後の気管支肺胞洗浄液中の蛋白濃度、48時間後の気管支肺胞洗浄液中の好中球数がコントロール群に比し有意に低下していた。LPS惹起急性肺損傷モデルおよび肺炎球菌肺炎モデルでは48時間後の気管支肺胞洗浄液中の蛋白濃度、および気管支肺胞洗浄液中の好中球数がコントロール群に比し有意に低下していた。一方、肺炎球菌のクリアランスについてはコントロール群に比し有意な変化は認められなかった。本年度の研究により、各種急性肺損傷モデルにおいてATXおよびLPAが透過性の亢進および炎症細胞の集積に寄与していることを明らかになった。
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