2011 Fiscal Year Annual Research Report
循環腫瘍細胞におけるEGFR耐性遺伝子変異同定に基づく肺癌個別化治療の開発
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22790746
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 彰 東北大学, 病院, 助教 (70361087)
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Keywords | EGFRチロシンキナーゼ阻害剤 / EGFR遺伝子変異 / 個別化治療 / 循環腫瘍細胞 / PNA-LNA PCRクランプ法 |
Research Abstract |
本研究は、肺癌治療において大きな問題となっている上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)に対する耐性化を、末梢血中から回収した循環腫瘍細胞(CTC)における耐性化遺伝子変異の同定によって判別し、その結果に基づいて適切な治療薬を選択する肺癌個別化治療の開発を目的としている。 初年度は、パイロット試験としてEGFR-TKI耐性化を来したと想定される肺癌患者から得た末梢血中から、Cell Tracksオートプレップ(オーソ・クリニカル・ダイアグノスティック社)にてCTCを回収することを試みた。すなわち、EGFR-TKIゲフィチニブ治療を長期間続けた後に画像上の増悪を認めた患者から文書同意を得て20mlの血液を採取しCTCの測定を行った。その結果、7.5mlあたり数個のCTCが確認され、上記システムによって進行肺癌患者におけるCTC測定が可能であることを確認した。その後、同じ末梢血から回収されたCTCのDNAを抽出し、それらからPNA-LNA PCRクランプ法にて耐性EGFR遺伝子変異T790Mを同定することを試みた。同患者は上記採血後に行った異なるEGFR-TKIエルロチニブによる治療が臨床的に奏効したことから、T790Mは陰性であることが予想されたが、回収されたDNA量が少なく解析が困難であった。 本年度は、上記Cell Tracksオートプレップシステムの改良を試みるとともに、採血量を40mlと増やしたうえでより多くのCTC回収を目指し、さらに肺癌患者における治療戦略として本法の妥当性を検証するための臨床試験プロトコールを開始した。現時点で5例の患者からの検体を解析しているが、CTCは2例に認めたものの、それらのCTC-DNAからT790Mの解析は困難であった。目標症例数を目指して、本臨床試験は引き続き継続されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題の対象となる肺癌患者は、治療抵抗性の病態のため全身状態が容易に悪化しやすく、臨床試験に参加できる状態である割合が当初の予想よりも低いためと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、末梢血中の循環腫瘍細胞中のバイオマーカーに基づいた個別化治療の臨床試験を進め、その成否を科学的に解析する。そして、本法の日常臨床における実施可能性や応用に際しての課題について十分な検討を行う。
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