2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト肺癌の発生・進展過程におけるリネッジ特異的シグナルの統御メカニズムの解明
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22790753
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 知也 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (70452191)
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Keywords | 肺腺癌 / TTF-1 / リネッジ特異的マスター調節因子 / リネッジ特異的シグナル / 発癌 / 遊走能 / 浸潤能 / 転移能 |
Research Abstract |
末梢肺の分化に関与するTTF-1 (Thyroid Transcription Factor-1)遺伝子は、リネッジ特異的マスター調節因子として細胞分化に寄与する一方で、その発現持続が肺腺癌の生存に必須であり発癌と進展に大きく関与する。そこで、我々はTTF-1特異的な発癌プロセスを明らかにするために、TTF-1遺伝子を導入した正常末梢気道上皮細胞株のマイクロアレイ解析を行い、TTF-1により調節される遺伝子群(以下、Downstream of TTF-1 (DOT)と称す)を同定した。 本年度はDOT-2遺伝子に着目し、生化学的・分子生物学的な解析を行い、肺腺癌におけるTTF-1による直接的なDOT-2遺伝子の転写活性化機構の存在を明らかにした。また、我々は一部のTTF-1陽性の細胞株および肺腺癌臨床検体において、DOT-2のプロモーター領域のメチル化によってその発現が抑制されていることを見出した。さらに、肺腺癌におけるDOT-2の機能を調べるために、細胞生物学的手法を用いて詳細な解析を行った結果、DOT-2分子の発現は肺腺癌細胞の遊走能・浸潤能を抑制すること、また、DOT-2導入肺腺癌細胞株を用いたヌードマウスへの異種移植実験により、DOT-2分子が肺転移能を低下させることを明らかにした。また、我々の最近の解析から、DOT-2高発現を示す肺腺癌臨床検体では病理学的に浸潤性が低いことも見出した。これらの結果は、TTF-1の発現が肺腺癌の生存に必須であるにも関わらず、TTF-1を発現している肺腺癌は臨床的に予後が良いという逆説的な事実に対して、DOT-2がその一端を担っている可能性を示唆するものである。
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