2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト肺癌の発生・進展過程におけるリネッジ特異的シグナルの統御メカニズムの解明
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22790753
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 知也 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (70452191)
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Keywords | 肺腺癌 / TTF-1 / リネジ特異的マスター調節因子 / リネジ特異的シグナル / 発がん / 遊走能 / 浸潤能 / 転移能 |
Research Abstract |
末梢肺の分化に関与するTTF-1(Thyroid Tran 8cription Factor-1)遺伝子は、リネッジ特異的マスター調節因子として細胞分化に寄与する一方で、その発現持続が肺腺癌の生存に必須であり発癌と進展に大きく関与する。我々はTTF-1特異的な発癌プロセスを明らかにするために、TTF-1遺伝子を導入した正常末梢気道上皮細胞株のマイクロアレイ解析を行い、TTF-1により調節される遺伝子DOT-2(Downstream of TTF-1-2)を同定した。DOT-2遺伝子を導入した細胞株ではアクチン・ミオシンの配交の乱れを生じ、アクチンストレスファイバーの形成が阻害され、またそれらの配交の形成・維持を司るmyosin regulatory light chain(RLC)とLIM domain kinase(LIMK)のリン酸化が低下することが分かった。さらにDOT-2はRho kinase 1(ROCK1)と直接結合しRLCのリン酸化を抑制すると同時に、ROCK1とRLCの結合も阻害することが判明した。次にDOT-2におけるROCK1の結合部位を同定し、そのドメインを欠損させたDOT-2を細胞株に過剰発現させてもアクチン・ミオシンの配交の乱れは生じないことを確認した。またDOT-2発現による細胞遊走能の抑制についてもROCK1の機能阻害を介したものであることが分かった。さらに3次元マトリゲル細胞浸潤解析により、DOT-2の過剰発現は細胞浸潤能を低下させ集団性の細胞運動を呈し、DOT-2発現抑制細胞株ではROCK1の機能を介して、個々の細胞は集団を形成せずマトリゲル内を浸潤することが分かった。以上の結果から、DOT-2は転移浸潤に重要なROCK1と直接結合することで負の調節を与える新たなROCK1のレギュレーター因子であることが判明した。
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