2010 Fiscal Year Annual Research Report
肺線維症発症機構におけるロイコトリエンの役割の解析と薬物治療効果の検討
Project/Area Number |
22790756
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
新堀 智子 島根大学, 医学部, 助教 (40437554)
|
Keywords | 肺線維症 / ロイコトリエン |
Research Abstract |
肺線維症は肺の線維化が慢性的に進行する難治性疾患であり、病態生理の解明と新規治療法の開発が急務である。ロイコトリエン(LTs:CysLTs,LTB_4)は炎症性メディエータとしてのみならず線維化への関与も示唆されているが、肺線維症における役割は不明である。本研究計画は急性期及び慢性期の肺線維症モデルマウスを用いて肺線維症におけるLTsの役割を明らかにし、肺線維症の有効な治療法の確立を目指す。平成22年度は、交付申請書の研究実施計画に記載した計画1及び計画2を実施した。まず、急性期モデルとしてブレオマイシンモデルを用いてCysLT1型受容体(CysLT_1R)拮抗薬の投与を検討した(ブレオマイシン処置3日前から2週間後まで連日投与)。同モデルでは線維性成分の増加とともに、肺胞洗浄液中のCysLTs量も増加した。CysLT_1R拮抗薬は肺繊維化およびTGF-β1発現増加を抑制し、CysLT2型受容体(CysLT_2R)の発現量低下を回復させた。この結果より、ブレオマイシンによる線維化にCysLTsは重要な役割を果たし、CysLT_1R拮抗薬は抗線維化効果を持つことが示された。次に慢性期モデルであるシリカモデルを用いてCysLTs関連指標の経時的変動を解析した(シリカ処置後3,7,14,28,56日後)。同モデルでは線維化の持続的進行とともに、ヒト病変に特徴的な線維性結節の形成が認められた。CysLTs量は肺胞洗浄液中では急性期でのみ増加したが、肺組織中では急性期・慢性期ともに増加した。CysLT_1Rは急性期から慢性期にかけて病変部で発現増加し、CysLT_2Rは発現低下していた。以上より、シリカモデルはよりヒト病変を模したモデルであることと、CysLTsが慢性期の線維化においても重要な役割を果たしている可能性が示された。 今年度の研究結果は、CysLTsが炎症反応のみならず肺線維症の発症進展に重要な役割を果たしていること、特に慢性期の進行性線維化にはCysLTsがより強く関与していることを示唆した。またCysLT_1R拮抗薬の肺線維症治療薬としての可能性も示され、その基礎・臨床医学的価値は極めて高いと考えられる。
|
Research Products
(3 results)