2012 Fiscal Year Annual Research Report
肺癌細胞の転移浸潤能におけるサイトケラチン8分子の機能解析
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22790760
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
石井 知也 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (80467836)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | サイトケラチン8 / マトリゲルアッセイ / 浸潤能 |
Research Abstract |
サイトケラチンの培養肺癌細胞株の浸潤能に及ぼす影響についての検討を行うために、まず非小細胞肺癌細胞株であるA549およびHI1017に対してマトリゲルアッセイを行った。マトリゲルに18回通して浸潤能を高めたHI1017は、細胞自体が小型化し細胞質も少なくなることを確認し、細胞骨格であるサイトケラチン(CK8,18)の発現量も減少していた。同様の変化がA549に対しても起こっており、CK8,18および19の発現量は減少していた。このことは、癌細胞が浸潤するにあたって細胞骨格を形成しているサイトケラチンの発現量を減らすことで、その浸潤能を高めていると推測される。逆に通常CK19を持たないHI1017に外因性にCK19を発現させたところ、癌細胞の浸潤能が抑制された。また、RNA干渉を用いてHI1017におけるCK8ないしCK18の発現を抑制したところ、いずれのCKも発現量が低下し、浸潤能も干渉前に比べて4倍に高まった。A549についても同様に、CK8ないしCK18の発現を抑制したところ、その浸潤能は3倍に高まることが確認できた。以上より、肺癌細胞の浸潤能はサイトケラチンの発現量と密接に関係しており、サイトケラチンの発現量を調節することが非小細胞肺癌の治療に生かせる可能性を見出した。肺癌細胞の浸潤能とサイトケラチン発現量は本研究では逆相関しており、これは、病期の進行した症例で血清シフラなどサイトケラチン関連の腫瘍マーカーが高いことと反対の事象のように思われる。しかし、進行症例では腫瘍量も多く、腫瘍マーカー高値は単に腫瘍量を反映しているだけなのかもしれない。 以上の実験結果については一昨年『Oncology Reports』に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サイトケラチンが肺癌細胞株の浸潤能に及ぼす影響については成果が得られ、論文化も行えた。その後、マトリゲルを繰り返し通して浸潤能を高めた細胞株に対して増殖能および薬剤耐性の違いを検証したが、有意な結果は得られていない。マトリゲルを繰り返し通過させて細胞株を樹立するのには時間を要するため、他の細胞株を用いることは難しいと考えられる。別の手法を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の実験の方向性としては、まずこれまでの実験で得られた結果を基にサイトケラチンの発現を恒常的に変化させた細胞株を作成し、その浸潤能の違いをin vivoで確認することがある。そのためにはshRNAを用いることも考えている。さらにサイトケラチンの発現の変化による転移の抑制が可能となるかも模索することになる。また、これまでの実験で得られた浸潤能を高めた細胞株(HI1017およびA549)とその親株とを用いて、細胞接着に関する細胞-細胞間および細胞-細胞外マトリックスとの関連についても解析していく予定である。
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Research Products
(1 results)