2010 Fiscal Year Annual Research Report
近位尿細管L型脂肪酸結合蛋白を介した腎内RASの調節機構並びに関連病態の解析
Project/Area Number |
22790803
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
谷藤 千暁 順天堂大学, 医学部, 助教 (80449058)
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Keywords | L-FABP / 食塩感受性高血圧 / レニン-アンジオテンシン系 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
高血圧やCKDの病態や進行には、腎内レニン・アンジオテンシン系(RAS)が生成する酸化ストレスを介して産生される炎症性サイトカインおよび、T細胞の腎組織内浸潤が関与している。我々は、ヒト近位尿細管で産生されるL型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)の抗酸化作用が、腎内RASの活性化とT細胞の腎組織内浸潤を抑制すると考え、近位尿細管L-FABPと腎内RASの高血圧発症における役割を検証することを目的とした。 マウスにアンジオテンシンIIを4週間持続投与することで腎内RASを活性化させ、その後の高食塩負荷により食塩感受性高血圧を惹起させるpost angiotensin salt-sensitivity hypertension modelを近位尿細管にL-FABPを強発現させたマウス(L-FABPTg)に導入し、近位尿細管のL-FABPと腎内RASの関係を検討した。L-FABPTgでは酸化ストレスマーカーである腎組織内4HNEと尿中8-OHDGが有意に減少しており、腎内RAS活性のマーカーとなる腎組織内アンジオテンシノージェンと炎症性サイトカインであるMCP-1の産生が有意に抑制されていた。そして、L-FABPTgは食塩感受性高血圧が誘発されなかった。 この現象が近位尿細管のL-FABPによるものかを検討するために、マウスの近位尿細管のcell lineであるmProxとmProxにL-FABPをtransgeneしたmProxTgをアンジオテンシンII(10^<-7>mol/L)で刺激し、酸化ストレスの産生とRASの活性化や炎症性サイトカインの産生を検討した。mProxTgは酸化ストレスマーカーであるHO-1が有意に抑制され、RAS活性化のマーカーであるアンジオテンシノージェンや炎症性サイトカインであるMCP-1の産生が抑制されていた。 以上より、近位尿細管のL-FABPの存在が抗酸化ストレス作用を介して、腎内RASや炎症性サイトカインの産生を抑制させることで食塩感受性高血圧の発症を抑制する可能性がある。
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