Research Abstract |
<本年度の研究結果> 1.ALS1, ALS10, Machado-Joseph病(MJD)の脊髄前角細胞でのCajal小体数の解析 今年度は,脊髄前角細胞の変性を来す他の疾患(ALS1:3症例,ALS10(p.Gln343Arg変異例):1症例,MJD:5症例)でのCajal小体数を検討した.Cajal小体のカウントは,1細胞中,核小体を含む平面で2μm厚中に存在する数を計測した,各疾患のCajal小体数の平均値±SEMは,ALS1:12.17±1.97/1細胞,ALSI:9,09±1.46/1細胞,MJD:10,09±2.29/1細胞だった.コントロール5症例の平均が17.19±1.82であり,いずれの疾患でもコントロールと比較して減少していた.一方,弧発性ALS5症例の平均は,8.06±1.97であり,減少の程度は弧発性ALSが最も強かった. 2.siRNAによるTDP-43の発現低下によるスプライシングへの影響 ALSの運動神経細胞質内にユビキチン陽性,TDP-43陽性の細胞質内封入体を形成すると,その神経細胞のTDP-43の核への局在が消失することが特徴である.そのためTDP-43の正常機能の喪失が,神経細胞死に関わっている可能性を考え,Hela細胞中のTDP-43をsiRNAで発現抑制し,Exon arrayを用いてスプライシングの影響を受ける遺伝子を検討した.網羅的解析の結果,有意なスプライシング変化を示した遺伝子数は,全解析対象の5%(892遺伝子)に認めた.その中で,小胞体およびゴルジ装置など細胞内小器官に関する遺伝子が多く認められた. <研究結果の意義> Cajal小体は,mRNAのスプライシングに関与するsmall nuclear RNAの成熟の場であり,Cajal小体の減少により,遺伝子発現に障害が生じていると推測される.またexon arrayの結果から,TDP-43の発現抑制により,小胞体やゴルジ装置に関する遺伝子にスプライシング変化を示したことから,ALSの神経細胞死には,細胞内小器官に発現の変化が関与していることが推測される.
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