2010 Fiscal Year Annual Research Report
単純性糖質摂取による耐糖能異常の発症機序の解明とインクレチンの役割
Project/Area Number |
22790855
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清野 祐介 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (80534833)
|
Keywords | インクレチン / グルコキナーゼ / スクロース / 耐糖能障害 |
Research Abstract |
本年度は、比較的低濃度の高ショ糖食(38.5%)の慢性摂取が耐糖能障害の生じる機序に関して個体レベルでの解析を行った。C57BL6マウスを通常食群(CD群)、38.5%高ショ糖食群(HSD群)に分けて5週間摂取させた。HSD群においてCD群と比較して絶食16時間後の経口糖負荷試験では負荷後早期(10,15分)に有意な血糖上昇を認めたが、負荷前および60分ではCD群と同程度であった。 消化管の解析・経口キシロース試験において空腹時のグルコース吸収は両群間で差を認めなかった。 インクレチン分泌・グルコース負荷後のGIP分泌は両群間で差を認めなかったが、負荷後のGLP-1分泌はHSD群で有意な低下を認めた。 膵島の解析-単離膵島実験でグルコース応答性インスリン分泌能は両群で有意差は見られなかった。骨格筋の解析-HSD群においてインスリン負荷試験によるインスリン感受性が亢進し、Aktのリン酸化も有意に亢進した。 肝臓の解析・経口糖負荷試験施行時の肝臓グリコーゲン含有量はHSD群において負荷後60分、120分で有意に低下を認めた。また、肝臓グルコキナーゼ発現ならびに活性はHSD群で低下を認めた。 以上より高ショ糖食負荷による耐糖能障害の機序については、(1)腸管からのGLP-1分泌低下に伴う相対的インスリン分泌の低下(2)肝臓でのグルコキナーゼ活性低下によるグリコーゲン貯蓄障害が関与すると考えられた。 ショ糖過剰摂取により生じる耐糖能障害あるいは糖尿病患者に対する治療としてGLP-1分泌を促進する薬剤あるいはGLP-1の分解を抑制するようなDPP-4阻害剤さらには肝臓でのグルコキナーゼ活性を亢進させるような薬剤の選択がよいことが示唆され、その臨床的意義は大きい。
|