2011 Fiscal Year Annual Research Report
スルホニル尿素薬の新たな標的としてのEpac2の機能とその役割
Project/Area Number |
22790860
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高橋 晴美 神戸大学, 医学研究科, 学術推進研究員 (50546489)
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Keywords | スルホニル尿素薬 / インクレチン / Epac2 / cAMP / インスリン分泌 / 糖尿病 |
Research Abstract |
Epac2欠損マウスから単離した膵島を用いて、スルホニル尿素(SU)薬とGLP-1によるインスリン分泌を検討した。8.8mMグルコースにおいて、グリベンクラミド(GLB)あるいはGLP-1によるインスリン分泌は、野生型マウスの膵島に比べてEpac2欠損マウスで低下し、またGLBとGLP-1の組み合わせによる分泌増強もEpac2欠損マウスで減弱していた。 次に、マウス膵灌流実験により、インスリン分泌動態を検討した。Epac2欠損マウスでは、野生型マウスに比べGLBによるインスリン分泌が刺激後5分以内の早期で低下していた。また、野生型マウスではGLP-1前処置により特に後期のインスリン分泌増強がみとめられたが、Epac2欠損マウスでは後期の分泌増強が減弱していた。この結果から、SU薬とインクレチンによるインスリン分泌増強作用にはEpac2シグナルが重要であることが示唆された。 さらに、SU薬とcAMPの組み合わせによるインスリン開口分泌動態を明らかにするために、全反射型蛍光顕微鏡を用いてインスリン顆粒動態を観察した。野生型マウスより単離した膵β細胞において、グリメピリド(GLM)刺激後の早期に開口分泌が惹起され(初期相)、その後、低頻度ではあるものの開口分泌が持続した(後期相)。また、開口分泌の多くは細胞内からリクルートされたインスリン顆粒によるものであった。GLP-1とGLMの組み合わせ刺激では、GLM単独刺激に比べ、初期相および後期相ともに開口分泌の増加が見られた。特に、刺激直後の開口分泌が増加した。したがって、単一の膵β細胞においても、インクレチンとSU薬の組み合わせにより、SU薬単独に比し、インスリン分泌が増強することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに、初年度の計画はほぼ遂行できたが、平成23年度以降の計画は一部しか遂行できなかった。しかし研究目的である、SU薬とインクレチンの相互作用におけるEpac2の役割の解明において、今後Epac2の下流シグナルの解明などの詳細な解析は必要であるものの、Epac2シグナルの重要性はこれまでの研究結果からほぼ明らかにされたと考え、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、SU薬とインクレチンによるインスリン分泌におけるEpac2シグナルの重要性が明らかになった。今後は、Epac2の下流シグナルの解明などのより詳細な研究が重要と考えられることから、平成23年度以降の計画のうち、特にEpac2/Rap1の下流シグナルの同定に重点をおいて研究を進める。研究に必要な実験材料や設備は既に備えており、遂行に問題はないと考えられる。
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Research Products
(7 results)